民泊の営業許可は必要?必要書類や取得するまでの流れなどを紹介

民泊を始めるには、旅館業法に基づく営業許可が必要です。無許可で営業した場合罰則が科せられるため、必ず必要な手続きを行いましょう。
この記事では、民泊の営業許可に必要な書類や費用、無許可で営業した場合の罰則などを紹介します。
民泊の種類

民泊には主に3つの種類があり、それぞれ異なる法律や規制が適用されます。どの種類の民泊を運営したいのかを明確にし、それに応じた手続きを行いましょう。ここでは、民泊の種類について紹介します。
旅館業法
民泊を運営する際に最も重要な法律の一つが旅館業法です。この法律は、宿泊施設の営業に関する基本的なルールを定めており、旅館業法に基いて民泊を行う場合は、営業許可が必要です。旅館業法には、宿泊施設の種類に応じて「旅館」「ホテル」「簡易宿所」などの分類があり、それぞれに異なる要件や規制が設けられています。
参考:厚生労働省「旅館業法」
特に、簡易宿所は一般的に家庭の一部を宿泊施設として提供する形態です。宿泊者数や施設の面積、設備の基準などが定められており、これらの条件を満たす必要があります。また、宿泊者に対して安全で快適な環境を提供するため、消防法や衛生管理に関する規制も遵守しなければなりません。
旅館業法に基づく営業許可を取得することで、合法的に民泊を運営できるだけでなく、宿泊者からの信頼も得やすくなります。したがって、民泊を始める際には、まずこの法律を理解しすると良いでしょう。
国家戦略特別区域法
国家戦略特別区域法は、特定の地域において民泊を含む新たなビジネスモデルを促進するために設けられた法律です。この法律は、地域経済の活性化や外国人観光客の誘致が目的です。特に、東京や大阪などの大都市圏や観光地において、民泊の運営が容易になるように規制が緩和されています。
国家戦略特別区域法に基づく民泊は、一般的な旅館業法とは異なるルールが適用されます。具体的には、旅館業法に基づく営業許可が不要である代わりに、特区民泊としての認定(自治体の承認)の取得が必要です。
また、この法律に基づく民泊を運営するためには、事前に自治体の定める要件を満たす必要があります。具体的には、地域の特性や観光資源を活かした運営計画を提出し、自治体の承認を得ることが求められます。
これにより、地域住民との共存や地域の魅力を高めることが期待されています。国家戦略特別区域法を利用することで、民泊事業者は新たなビジネスチャンスを得られるでしょう。
新法民泊
新法民泊は、2018年に施行された「住宅宿泊事業法」に基づく民泊の形態です。この法律は、一般住宅を宿泊施設として利用可能にし、短期的な宿泊を希望する旅行者に対して新たな選択肢を提供しています。
ただし、新法民泊には宿泊日数の制限があります。年間180日以上の営業が禁止されており、これにより地域住民との共存を図ることが目的とされています。
新法民泊を運営するためには、事前に自治体への届出が必要です。届出に加え、法令遵守や必要な準備を整えることで、合法的に営業が可能です。
また、宿泊者が安心して利用できる環境を整える必要があるため、宿泊施設としての基準を満たさなければなりません。具体的には、消防法や建築基準法に基づく安全基準の遵守が求められます。
参考:民泊制度ポータルサイト minpaku「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」
民泊の営業許可の必要書類

民泊の営業許可・届出に必要な書類は下記のとおりです。
申請・届出書類 | 旅館業法(簡易宿所) | 新法民泊 | 国家戦略特別区域法 |
営業許可申請書 | 必要 | 不要 | 不要 |
住宅宿泊事業届出書 | 不要 | 必要 | 不要 |
特区民泊認定申請書 | 不要 | 不要 | 必要 |
物件関連書類 | 旅館業法(簡易宿所) | 新法民泊 | 国家戦略特別区域法 |
建物の登記事項証明書 | 必要 | 必要 | 必要 |
賃貸借契約書(賃貸の場合) | 必要 | 必要 | 必要 |
建物の図面(平面図、立面図など) | 必要 | 必要 | 必要 |
設備・管理関連書類 | 旅館業法(簡易宿所) | 新法民泊 | 国家戦略特別区域法 |
消防法令適合通知書 | 必要 | 必要 | 必要 |
衛生管理に関する書類(清掃計画など) | 必要 | 必要 | 必要 |
その他の書類 | 旅館業法(簡易宿所) | 新法民泊 | 国家戦略特別区域法 |
近隣住民への説明記録 | 自治体による | 自治体による | 必要 |
誓約書(法令遵守に関するもの) | 必要 | 必要 | 必要 |
役員名簿(法人の場合) | 必要 | 必要 | 必要 |
上記はあくまでも一般的な必要書類であり、自治体によっては追加の提出を要求される場合があります。必ず事前に管轄の自治体に確認し、最新情報を入手しましょう。
民泊の営業許可を取得するまでの流れ
民泊を合法的に運営するには、営業許可を取得する必要があります。その手続きは複数のステップに分かれており、各ステップをしっかりと理解して進めることが重要です。
ここでは、民泊の営業許可を取得するまでの流れを詳しく紹介します。
1.自治体に事前相談をする

地域によって民泊に関する独自のルールや規制が存在するため、まずは自治体に事前相談をしましょう。事前に確認しておくことで、スムーズな手続きが可能です。
民泊の営業許可を取得するための条件や、必要な書類のリストを提供している自治体もあるため、役所や観光課に連絡を取り情報を収集しましょう。
相談する際は、運営予定の物件の所在地や、提供するサービスの内容、宿泊人数などを具体的に伝えます。これにより、担当者から適切なアドバイスや必要な手続きについての情報を得ることが可能です。
また、地域によっては、民泊に関する説明会やセミナーを開催している場合もあるため、参加することで最新の情報を得ることができるでしょう。
2.保健所に営業許可を申請する
旅館業法で民泊を運営するには、保健所で営業許可を申請しなければなりません。この手続きでは、民泊が適切な衛生基準を満たしているかを確認します。
特に、衛生面や安全面に関するチェックが厳しく行われるため、事前に施設の状態を整えましょう。調査が無事に終了し、問題がなければ営業許可が下り、この時点で、正式に民泊の営業が可能です。
なお、すべての民泊に営業許可が必要なわけではありません。下記の制度では、営業許可ではなく異なる手続きを行う必要があることに留意してください。
- 新法民泊……自治体への届出制
- 国家戦略特別区域法……自治体の認定制
3.施設を検査してもらう
民泊の営業許可を取得するための重要なステップの一つが、施設の検査です。この検査は、保健所や自治体の担当者が行い、施設が旅館業法やその他の関連法令に適合しているかを確認します。
具体的には、下記のように施設の衛生状態が適切であるかどうかがチェックされます。これらは宿泊者の健康と安全を守るために非常に重要な要素です。
- 清掃が行き届いているか
- トイレや浴室の設備が正常に機能しているか
- 食材の保管方法が適切か
消防法に基づく安全基準も検査の対象です。避難経路の確保や消火器の設置状況、火災報知器の設置などが適切に行われているかが確認されます。これにより、万が一の火災発生時にも宿泊者が安全に避難できる環境が整っているかが評価されます。
検査で不備が見つかった場合は、指摘された点を改善し、再度検査を受けなければなりません。そのため、事前に施設の状態をしっかりと整えておく必要があります。検査をスムーズに進めるためにも、専門家のアドバイスを受けると良いでしょう。
4.営業許可の取得する
保健所による施設の検査が無事に終わった後、正式に営業許可を取得できます。この段階では、申請書類に記載した内容が正確であることがチェックされ、施設が旅館業法やその他の関連法令に適合しているかどうかが評価されます。
営業許可の取得には、数日〜数週間程度の時間がかかります。具体的な期間は自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。また、許可が下りるまでの間は、民泊の営業を開始することができないため、スケジュールを考慮して準備を進める必要があります。
許可が下りた後は、営業の開始が可能です。ただし、運営中も定期的な検査や報告が求められる場合があることに留意してください。
民泊の営業許可の取得にかかる費用

民泊の営業許可の取得にかかる費用は、自分で手続きするか専門家への依頼するかによって費用が変動します。事前にかかる費用を把握し、予算計画を立てて民泊の営業許可を取得しましょう。
続いて、民泊の営業許可の取得にかかる費用を紹介します。
自分で取得する場合
自分で民泊の営業許可を取得する際は、旅館業営業許可証の提出時に手数料がかかります。旅館業法(簡易宿泊所)の場合、地域によって異なるものの、1万5,000〜2万5,000円程度です。
旅館業営業許可証の手数料に加えて、建物の登記事項等証明書の取得費用や、図面の作成費用などがかかります。自分で取得したとしても、数万円の費用が発生することに留意してください。
行政書士に依頼する場合
行政書士に依頼した場合は、20〜40万円程度の代行費用が発生します。自分で許可を取得するよりも高額ではあるものの、事前調査〜書類作成まで実施してくれるため、複雑な手続きを簡略化できます。
自分で手続きする時間がなく、スムーズに民泊を運営したい場合は、行政書士に代行を依頼しましょう。
民泊の営業許可を取らなかった場合の罰則

無許可営業が発覚した場合、営業停止命令が下されることがあります。営業停止命令が下された際は、運営を即座に中止しなければなりません。
また、無許可営業に対しては、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることもあります。このような経済的な負担は、民泊を運営するうえで大きな圧迫となるため、必ず営業許可を取得しましょう。
参考:旅館業法「第3条・第10条」
また、無許可営業が続くと行政からの信頼を失い、今後の営業許可の取得が難しくなる可能性もあります。地域の住民や他の事業者とのトラブルを引き起こすリスクも高まるため、無許可営業は避けるべきです。
まとめ
民泊を始めるには、下記のステップを踏む必要があります。
- 旅館業法……保健所の営業許可を取得
- 新法民泊……自治体への届出制
- 国家戦略特別区域法……自治体の認定制
旅館業法で民泊を運営する際、無許可で営業した場合は、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるため、注意が必要です。事前準備を行い法律を遵守して、民泊ビジネスをスタートさせましょう。