民泊物件の投げ売りが増加中!購入前に知るべきリスクと見極め方

最近、市場価格よりも大幅に安い「投げ売り」民泊物件が増えています。一見お得に見えますが、なぜそこまで安く売られているのでしょうか。法規制の強化や収益悪化、近隣トラブルなど、投げ売りの背景には様々な問題が隠れています。この記事では、民泊物件が投げ売りされる理由と、購入を検討する際に確認すべきリスク、賢い判断基準について解説します。
民泊物件の「投げ売り」とは何か

投げ売りとは、通常の市場価格を大きく下回る価格で物件が売りに出されることです。なぜそのような状況が生まれるのか、背景を理解しましょう。
投げ売り物件の定義と市場価格との差
投げ売り物件とは、通常の相場よりもも安い価格で売りに出されている物件を指します。売主が早急に現金化を必要としていたり、運営継続が困難になったりした場合に、このような価格設定が行われます。一見すると魅力的な投資機会に映りますが、安い理由には必ず背景があるため注意が必要です。立地や築年数、設備状況だけでなく、法的な問題や近隣トラブルなど、表面化していないリスクが潜んでいる可能性もあります。市場価格との差が大きいほど、より慎重な調査が求められるでしょう。
投げ売りが増加している現状
2018年の民泊新法施行以降、民泊市場は急速に拡大しましたが、その一方で撤退するオーナーも増えています。インバウンド需要の低迷や法規制の強化、運営コストの上昇などが重なり、採算が合わなくなったケースも少なくありません。最近では、訪日客の回復で需要は戻りつつありますが、個人レベルで安定した収益を維持するのは容易ではない状況です。そのため、不動産ポータルサイトなどでは「民泊運営中」「簡易宿所許可付き」といった物件が相場より安く売りに出される例も見られます。購入を検討する際は、価格だけでなく、運営環境や収益性を慎重に見極めることが大切です。
投げ売り物件の探し方
投げ売り物件を探すには、複数のルートを組み合わせることが大切です。一般的な不動産ポータルサイトでは、「民泊」「簡易宿所」などのキーワードで検索すると運営中の物件が見つかります。民泊専門の売買サイトや投資物件専門のプラットフォームなら、運営実績や許可状況も確認しやすいでしょう。
市場価格より安く購入したい場合は、競売物件情報サイト(BIT)も選択肢の一つです。裁判所が差し押さえた物件を通常より低価格で入札できる可能性があります。不動産業者に直接問い合わせる方法も有効です。ただし、情報が少ない物件や急ぎの売却案件ほど、何らかのリスクを抱えている傾向にあるため注意しましょう。
民泊物件が投げ売りされる5つの理由

物件が投げ売りされる背景には、オーナーが運営を続けられなくなった明確な理由があります。主な要因を把握しておきましょう。
法規制強化と180日制限の影響
民泊新法の施行により、届出民泊は年間180日しか営業できなくなりました。それまで年間を通じて運営していたオーナーは、売上が半分以下に減少し、固定費を賄えなくなるケースが続出しています。また、自治体独自の規制で住居専用地域での営業が禁止されたり、平日のみ営業可能といった制限が加わったりした地域もあります。こうした規制強化により、当初の収益計画が崩れ、事業継続を断念したオーナーが物件を手放しているのです。
民泊バブル崩壊と競合増加
2015年から2017年頃にかけて、訪日観光客の急増を背景に民泊ブームが起こり、多くの投資家が高収益を見込んで参入しました。しかし、供給過多により競争が激化し、宿泊料金の値下げ競争が始まりました。特に大阪や京都などの観光地では、同じエリアに数十件の民泊が乱立し、稼働率が大幅に低下しています。当初想定していた収益が得られず、ローン返済や固定費の支払いに苦しむオーナーが増加しました。結果として、早期に撤退して損失を最小限に抑えようとする動きが広がっています。
宿泊単価の下落と利益圧迫
競合増加により、宿泊単価は年々下落傾向にあります。以前は1泊1万円以上で予約が入っていた物件も、今では5,000円前後まで下げないと予約が入らないケースも珍しくありません。単価が下がれば売上も減少し、清掃費や光熱費などの変動費を差し引くと、ほとんど利益が残らない状況に陥ります。こうした利益圧迫により、運営を継続するメリットが失われ、物件を手放す判断をするオーナーが増えています。
資金繰り悪化とローン返済困難
民泊運営を目的に不動産投資ローンを組んだものの、想定通りの収益が得られず返済が滞るケースがあります。特にフルローンや高金利で借り入れたオーナーは、毎月の返済額が大きく資金繰りが厳しくなります。売上が伸びない状況が続けば、自己資金を投入しても赤字が膨らむばかりです。最終的に返済不能となり、任意売却や競売で物件を手放さざるを得なくなります。
近隣トラブルと管理組合の反対
民泊運営によって近隣住民とのトラブルが発生し、運営継続が困難になる場合も見受けられます。騒音やゴミ出しルール違反、共用部分の無断使用などが原因で苦情が相次ぎ、管理組合から民泊禁止の決議がされることもあります。また、分譲マンションでは管理規約の改正により民泊が禁止され、営業継続ができなくなった物件も少なくありません。トラブル対応に疲弊したオーナーが、早期に物件を手放すケースが増えています。
投げ売り物件を購入する際のリスク

安いからといって安易に購入すると、後で大きな問題に直面する可能性があります。購入前に確認すべきリスクを知っておきましょう。
収益性が低い根本原因の見極め
投げ売りされている物件は、何らかの理由で収益が上がらなかった物件です。立地が悪い、周辺に観光資源がない、交通アクセスが不便といった構造的な問題がある場合、購入後も同じ問題に直面します。前任のオーナーが運営に失敗した理由を詳しく調査し、自分なら改善できるのか冷静に判断することが必要です。単に運営方法が悪かっただけなのか、物件そのものに問題があるのかを見極めなければ、同じ失敗を繰り返すことになります。過去の稼働率や宿泊単価、レビュー評価などのデータを入手し、徹底的に分析をしましょう。
法令遵守と営業許可の引継ぎ問題
民泊を運営するには、旅館業法の許可または民泊新法の届出が必要です。とはいえ、投げ売り物件によっては無許可で運営されていたり、許可の名義変更ができない物件もあるでしょう。特に旅館業法の許可は建物の構造や消防設備が厳しく審査されます。そのため、前オーナーが取得していても、新オーナーが引き継げるとは限りません。場合によっては購入後に許可が取れず、営業できない事態に陥るリスクもあることから、契約前に行政窓口で許可の引継ぎ可能性を確認し、必要な手続きを把握しておくとよいでしょう。
近隣環境と過去のトラブル履歴
物件そのものに問題がなくても、近隣住民や管理組合とのトラブル履歴がある場合、運営継続は困難です。前オーナーが苦情を受けていた物件では、新オーナーに変わっても同じ目で見られる可能性があります。特に分譲マンションでは、管理組合の議事録を確認し、民泊に関する議論や決議がないかチェックが欠かせません。また、近隣住民に直接話を聞いてみることも有効です。過去にトラブルがあった物件では、どれだけ丁寧に運営しても改善が難しく、最終的に撤退を余儀なくされるリスクがあります。
投げ売り物件の購入を検討する際のチェックポイント

投げ売り物件にも優良な掘り出し物は存在します。適切な調査と判断基準で、投資価値のある物件を見極めましょう。
用途地域と営業許可の確認
まず、物件が所在する用途地域を確認しましょう。住居専用地域では民泊新法の届出すらできない自治体もあります。また、旅館業法の許可を取得できる地域かどうかも重要です。役所の建築指導課や保健所に問い合わせ、民泊営業が可能かを事前に確認しましょう。さらに、消防法の基準を満たしているか、必要な消防設備が設置されているかもチェックが必要です。建物の構造によっては追加工事が必要になり、予想外のコストがかかる場合もあります。購入前に専門家に依頼して法令調査を行い、営業が可能かしっかりと把握しておきましょう。
過去の運営実績と収支データの精査
売主からは、過去の運営データを必ず入手しましょう。月ごとの稼働率や宿泊単価、売上・経費の内訳を確認すれば、実際の収益性が見えてきます。あわせて、約サイトでの評価やレビュー内容も重要な判断材料です。低評価が多い場合は、清掃や設備などに問題がある可能性があります。さらに、周辺の民泊の料金や稼働状況も調べましょう。同じエリア全体で稼働率が低いなら、購入後も苦戦するおそれがあります。数字や口コミなどの客観的なデータをもとに、現実的な収益シミュレーションを立てることが大切です。
リノベーション費用の見積もり
投げ売り物件の多くは、設備が古かったり内装が劣化していたりします。購入後にリノベーションが必要な場合、その費用も購入価格に上乗せして考えなければなりません。水回りの修繕、壁紙の張り替え、家具家電の入れ替えなど、必要な工事をリストアップし、複数の業者から見積もりを取りましょう。また、消防設備の追加設置やバリアフリー化などの法令対応工事が必要な場合もあるため、リノベーション費用を含めた総額が周辺の類似物件と比べて本当に割安かを確認しましょう。
将来的な転用可能性の検討
民泊運営がうまくいかなかった場合の出口戦略も考えておく必要があります。通常の賃貸住宅として貸し出せるか、売却時に買い手が見つかりやすいかなど、転用可能性を検討することが大切です。立地が良く、住居としての需要があるエリアなら、民泊を諦めても別の活用方法があります。逆に、民泊以外の用途が見込めない物件は、リスクが高いと言えます。また、将来的な地域開発計画や再開発の予定がないかも確認しておくと良いでしょう。長期的な視点で物件の価値を判断し、柔軟な運用ができるかどうかを見極める必要があります。
まとめ
民泊物件の「投げ売り」は、法規制の強化や営業日数の制限、民泊バブルの崩壊などが重なって起きています。物件数が増えすぎて宿泊価格が下がり、資金繰りに苦しむオーナーもいます。こうした物件を購入する際は、収益が落ちた原因をしっかり見極めることが大切です。
また、法令への適合状況や建物の修繕費や近隣トラブル、ローン残債なども要確認です。価格の安さだけにとらわれず、用途変更や再活用の可能性など、将来の運用まで見据えて判断しましょう。