M&Aによる事業継承が増えている理由とは?よくある失敗も解説

近年、後継者不足に悩む中小企業を中心に、M&Aを活用した事業継承が増加しています。これは経営者の高齢化や少子化が進み、身内や社内に適任者がいないケースが多いためです。
この記事では、M&Aによる事業継承が注目される理由や、そのメリット、よくある失敗事例と成功に導くためのポイントを詳しく解説します。
M&Aを活用した事業継承が増えている理由

近年、M&Aを活用した事業継承が増えている背景には、後継者不足の中小企業が増加していることが大きな要因です。他にもいくつか理由があるので解説していきます。
後継者不足の中小企業が増えている
近年、特に中小企業において後継者不足が深刻な問題となっています。経営者の高齢化が進む中、次世代を担う人材が不足しているため、事業の継続が危ぶまれるケースが増加しています。
特に地方の中小企業では、地域の人口減少や若者の都市部への流出が影響し、後継者を見つけることがますます難しくなっています。
また、少子化の影響も大きく、家族内での後継者候補がいない企業が多く見受けられます。これにより、経営者は自らの事業を他者に引き継ぐ手段としてM&Aを選択するケースが増えているのです。
M&Aの支援が充実し始めている
近年、M&Aを活用した事業継承が増加する中で、M&Aに関する支援体制が整いつつあります。
これまでM&Aは大企業の専売特許とされていましたが、最近では中小企業向けの支援サービスが充実してきました。専門のコンサルタントや仲介業者が増え、企業のニーズに応じたサポートを提供しています。
また、政府や地方自治体もM&Aを促進するための施策を打ち出しており、資金面や情報提供の支援が行われています。
これにより、企業はよりスムーズに後継者を見つけることができ、事業継承の選択肢としてM&Aが現実的なものとなっています。
自分で事業を行う人が増えている
近年、特に若い世代の間で自分自身のビジネスを立ち上げる動きが活発化しています。この背景には、自由な働き方を求める意識の高まりや、インターネットを活用した新しいビジネスモデルの普及があります。
また、M&Aを通じて事業を引き継ぐことができる環境が整いつつあるため、既存の企業を買収して自分のビジョンを実現する道も開かれています。
これにより、後継者不足の問題を抱える中小企業にとっても、適切な後継者を見つけるチャンスが広がっているのです。
M&Aを活用した事業継承のメリット

M&Aを通じた事業継承には多くのメリットがあります。
- 後継者が見つかりやすい
- 従業員の雇用やサービス提供の継続ができる
- 自社株売却による利益を得ることができる
今回は、これらの3つのメリットについて解説します。
後継者が見つかりやすい
M&Aを活用することで、後継者を見つけるプロセスが大幅に簡素化されます。従来の事業継承では、身内や社内から後継者を探すことが一般的でしたが、適任者がいない場合、選択肢が限られてしまいます。
しかし、M&Aを通じて外部からの買収や合併を行うことで、経営者としての経験やスキルを持った人材を迎え入れることが可能になります。
さらに、M&A市場は多様化しており、さまざまな業種や規模の企業が売却を検討しています。このため、企業のニーズに合った後継者を見つけやすくなっているのです。特に、経営者が引退を考えるタイミングでM&Aを選択することで、スムーズな事業継承が実現しやすくなります。
従業員の雇用やサービス提供の継続ができる
M&Aを活用した事業継承の大きなメリットの一つは、従業員の雇用を守り、サービス提供の継続が可能になる点です。特に中小企業では、経営者が引退する際に従業員の雇用が不安定になることが多く、これが企業の存続に影響を及ぼすことがあります。
しかし、M&Aを通じて事業を引き継ぐことで、既存の従業員がそのまま働き続けられる環境が整います。
また、M&Aによって新たな経営者が事業を引き継ぐ際、従業員のスキルや経験を活かすことができるため、サービスの質を維持しやすくなります。これにより、顧客に対しても安定したサービスを提供し続けることができ、企業の信頼性を高める要因となります。
自社株売却による利益を得ることができる
M&Aを活用した事業継承の大きなメリットの一つは、自社株を売却することで得られる利益です。経営者が事業を譲渡する際、適正な評価を受けた自社株を売却することで、資金を得ることができます。
この資金は、引退後の生活資金や新たなビジネスへの投資に充てることができるため、経営者にとって非常に重要な要素となります。
また、M&Aによる株式売却は、単に利益を得るだけでなく、事業の継続性を確保する手段ともなります。新たな経営者が事業を引き継ぐことで、従業員の雇用が守られ、顧客へのサービス提供も継続されるため、地域経済にも良い影響を与えることが期待されます。
事業継承を行うときによくある失敗

事業継承を進める中で、よく見られる失敗にはいくつかの要因があります。これから説明する失敗を避けるためには、計画的な準備が不可欠です。
後継者が見つからない
M&Aを活用した事業継承において、最も大きな課題の一つが後継者の確保です。特に中小企業では、経営者の高齢化が進む中で、身内や社内から適任者を見つけることが難しくなっています。後継者不足は、企業の存続に直結する問題であり、経営者が引退を考える際に大きな不安要素となります。
また、後継者が見つからない理由として、少子化の影響も挙げられます。子どもが少ない家庭では、事業を継ぐことができる次世代の人材が限られてしまいます。
このような状況下で、M&Aは新たな選択肢として注目されていますが、後継者を見つけるためには、適切な情報収集や専門家の支援が不可欠です。
後継者の育成・引き継ぎが間に合わない
M&Aによる事業継承において、後継者の育成や引き継ぎが間に合わないという問題は非常に重要です。特に、経営者が高齢化する中で、急な引退や健康問題が発生すると、後継者が十分に育っていない場合、事業の継続が危ぶまれます。
後継者が実務経験や経営ノウハウを十分に習得する前に、経営を引き継ぐことになれば、業務の停滞や顧客の信頼喪失につながる恐れがあります。
また、後継者が育成されていない場合、経営者自身が持つ独自のビジョンや企業文化が継承されず、企業のアイデンティティが失われる可能性もあります。このような状況を避けるためには、早期から後継者候補を選定し、計画的な育成プログラムを実施することが求められます。
古参の従業員からの反対意見が飛び交う
事業継承において、古参の従業員からの反対意見が出ることは少なくありません。特に、長年会社に貢献してきた従業員は、経営方針や文化に対する強い思い入れを持っています。
そのため、新しい後継者が現れた際に、これまでのやり方や価値観が変わることに対して不安を感じることが多いのです。
また、古参の従業員は自らの経験や知識を重視し、新しい経営者がそれを理解しないのではないかという懸念も抱きがちです。このような反対意見は、場合によっては社内の雰囲気を悪化させ、事業継承のプロセスを複雑にする要因となります。
事業継承を成功させるポイント

事業継承を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これから説明するポイントを踏まえ、事業継承を成功させましょう。
早めから後継者を探しておく
事業継承を成功させるためには、早期に後継者を探し始めることが重要です。経営者が高齢化する中で、後継者不足が深刻な問題となっています。
適切な後継者を見つけるには時間がかかることが多く、急な引き継ぎでは十分な準備ができない場合があります。早めに後継者候補を探し、関係を築くことで、スムーズな引き継ぎが可能になります。
また、後継者候補に対して経営のノウハウや企業文化を伝える時間を確保することも、事業の継続性を高めるために欠かせません。
社内で後継者候補の育成を行う
M&Aによる事業継承を成功させるためには、社内で後継者候補を育成することが重要です。経営者が高齢化する中、身近な人材を後継者として育てることで、企業の文化や価値観を引き継ぎやすくなります。
具体的には、若手社員に経営に関する知識やスキルを身につけさせるための研修プログラムを導入したり、実際の業務を通じて経験を積ませることが効果的です。
また、後継者候補には、経営者としての視点を持たせるために、経営戦略や財務管理についての理解を深める機会を提供することも大切です。これにより、候補者は自信を持って経営を引き継ぐことができ、企業の持続的な成長に寄与することが期待されます。
資金繰りの対策を打っておく
事業継承を成功させるためには、資金繰りの対策を事前に講じておくことが不可欠です。特にM&Aを通じて事業を引き継ぐ場合、買収資金や運転資金の確保が重要です。後継者が事業を引き継いだ際に、資金不足に陥ると、事業運営に支障をきたす恐れがあります。
そのため、事業継承を計画する段階から、資金の流れを見直し、必要な資金を確保するための戦略を立てることが求められます。
具体的には、金融機関との関係を強化し、融資の可能性を探ることや、自己資金の積み立てを行うことが考えられます。また、事業の収益性を向上させるための施策を講じることも、資金繰りの安定に寄与します。
専門家に相談する
事業継承を成功させるためには、専門家の助言を受けることが非常に重要です。M&Aに関する知識や経験を持つ専門家は、適切な後継者の選定や、契約内容の確認、さらには税務面でのアドバイスを提供してくれます。
特に、初めてM&Aを行う経営者にとっては、専門家のサポートが心強い味方となります。また、専門家は市場の動向や業界のトレンドを把握しているため、より良い条件での取引を実現する手助けをしてくれるでしょう。
事業継承のプロセスをスムーズに進めるためにも、早い段階から専門家に相談することをお勧めします。
事業継承の時に活用すべき税制・補助金とは

事業継承を円滑に進めるためには、税制や補助金の活用が重要です。これから説明する2つの制度・補助金を活用することで、事業継承の成功率を高めることが可能です。
事業継承税制
事業継承税制は、中小企業の事業継承を円滑に進めるための重要な制度です。この税制は、後継者が事業を引き継ぐ際に発生する税負担を軽減することを目的としています。
具体的には、事業用資産の譲渡にかかる税金を減免する措置があり、これにより後継者が事業を継続しやすくなります。
特に、後継者が親族である場合や、一定の条件を満たす場合には、相続税や贈与税の特例が適用されることがあります。このような税制の活用は、後継者不足が深刻な中小企業にとって、事業継承を実現するための大きな助けとなります。
事業形成補助金
事業形成補助金は、中小企業が事業継承を円滑に進めるための重要な支援策です。
この補助金は、後継者が事業を引き継ぐ際に必要な資金をサポートするもので、特に新たな事業展開や設備投資に対して助成が行われます。これにより、後継者は経営の安定を図りながら、事業の成長を目指すことが可能になります。
また、事業形成補助金は、後継者が事業を引き継ぐ際の負担を軽減するだけでなく、地域経済の活性化にも寄与します。中小企業が持つ独自の技術やサービスを継承し、発展させることで、地域の雇用を守り、さらなる発展を促すことが期待されています。
まとめ
M&Aを活用した事業継承は、後継者不足や経営者の高齢化といった現代の課題に対する有効な解決策として注目されています。適切な後継者を見つけることができれば、企業の存続や従業員の雇用を守ることが可能です。
また、M&Aの支援体制が整いつつある今、事業継承を成功させるための環境も整っています。しかし、後継者の育成や引き継ぎの計画を怠ると、失敗に繋がるリスクもあるため、早めの準備と専門家の助言を受けることが重要です。