宿泊者名簿の作成義務とは?民泊運営者向けテンプレート・記載方法・保存期間を解説

民泊を運営する際、宿泊者名簿の作成と保管は法律で義務付けられています。氏名や住所、宿泊日などの情報を正確に記録し、一定期間保存しなければなりません。違反すれば罰則の対象となるため、正しい作成方法と管理ルールを知っておく必要があります。
本記事では、宿泊者名簿に記載すべき項目やテンプレートの入手方法、保存期間、デジタル管理の方法まで、運営者が押さえるべきポイントを詳しく解説します。
民泊における宿泊者名簿の作成義務とは

まずは、どの法律に基づいて義務付けられているのか、なぜ必要なのかという根本的な理由から理解を深めましょう。
住宅宿泊事業法・旅館業法での位置づけ
民泊を運営するための法律には、主に住宅宿泊事業法と旅館業法の2つがありますが、いずれの法律においても宿泊者名簿の作成・備え付けは義務化されています。
住宅宿泊事業法では第8条、旅館業法では第6条にそれぞれ明確な規定があり、宿泊者名簿の作成はテロ対策や感染症対策、犯罪防止を目的としたものです。
また、国家戦略特別区域法に基づく特区民泊においても同様の義務があります。つまり、民泊の形態を問わず、宿泊者名簿を作成せずに運営することは法律違反となります。
宿泊者名簿が必要な理由と法的根拠
宿泊者名簿が必要とされる最大の理由は、感染症発生時の経路追跡とテロ等の犯罪抑止です。
万が一、宿泊者の中から感染症患者が出た場合、保健所はその人物がいつ、どこに滞在し、誰と接触したかを追跡調査します。その際、名簿が不正確だと感染拡大を防ぐ手がかりが失われてしまいます。
また、パスポートの確認を含めた本人確認を厳格に行うことは、国際的なテロリストや犯罪者が身元を隠して宿泊することを防ぐ効果も期待されています。以前は日本人の場合、職業の記載義務がありましたが、法改正により現在は必須ではなくなりました。しかし、氏名や住所といった基本情報の正確な記録は、安全な国づくりや地域社会の安全を守るために定められた法令上の重要なルールです。
宿泊者名簿に記載すべき必須項目

宿泊者名簿には、適当な情報をメモしておけばよいわけではありません。法令で定められた必須項目を漏れなく記載する必要があります。特に外国人宿泊者に関しては追加の義務があるため、日本人と外国人で対応を変える必要がある点を押さえておきましょう。
日本人宿泊者の記載事項
日本国内に住所を持つ宿泊者(日本人および在留外国人)の場合、最低限記載しなければならない項目は以下の4点です。
| 氏名住所職業宿泊日(到着日および出発日) |
2023年の旅館業法改正に伴い、一部の運用が見直されましたが、基本的にはこれらの情報を正確に取得する必要があります。
「職業」に関しては、以前ほど厳格に求められない傾向にありますが、法律上の記載事項としては残っているため、空欄にせず会社員や自営業などを記入してもらうのが原則です。
また、本人確認のために運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書の提示を求めることが推奨されています。
対面で鍵を渡す場合はその場で確認し、無人運営の場合はビデオ通話や画像アップロード機能を用いて、名簿の内容と本人が一致しているかを照合しましょう。
外国人宿泊者の記載事項とパスポート確認
日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、上記の4項目(氏名、住所、職業、宿泊日)に加え、以下の2項目の記載が義務付けられています。
| 国籍旅券番号(パスポート番号) |
さらに重要なのが、パスポートの写しの保存です。単に番号を控えるだけでなく、パスポートの顔写真ページをスキャンや撮影によって画像データとして保存しなければなりません。これは法令で定められた義務であり、行政検査でも必ずチェックされるポイントです。
なお、日本国内に住所がある外国人については、日本人と同様の扱いとなるため、パスポートの写しは必須ではありませんが、住所確認のために在留カードの提示を求めることが望ましいでしょう。
同伴者・代表者の取り扱い
「代表者だけ記入すればよいか?」という質問はよくありますが、原則として宿泊者全員分の記載が必要です。グループ旅行や家族旅行であっても、代表者1名の情報だけでは不十分です。
宿泊者全員の氏名、住所、職業を記載し、外国人の場合は全員分のパスポートコピーを取得します。特に大人数のグループの場合、全員分の情報を集めるのは手間がかかりますが、感染症対策の観点からも「誰が泊まったかわからない」状態は許されません。
多くの民泊管理システムでは、代表者が予約時に入力したリンクを同伴者に共有し、各自のスマホから事前入力してもらう機能があります。こうしたツールを活用し、チェックイン時の手間を減らしつつ、全員分の情報を確実に回収する仕組みを整えましょう。
宿泊者名簿のテンプレートと作成方法

名簿の形式には決まった書式はなく、必須項目さえ網羅されていれば紙の台帳でもデジタルデータでも問題ありません。ここでは、効率的かつ正確に名簿を作成するための3つの方法を紹介します。
自治体提供の公式テンプレートの入手方法
最も手軽で確実なのは、各自治体の保健所や厚生労働省が公開しているテンプレートを利用することです。「〇〇市 民泊 宿泊者名簿」などで検索すれば、その地域の条例に即したExcelやPDF形式の様式が無料で入手できます。
自治体によっては、独自の上乗せ条例で電話番号や年齢の記載を必須としている場合もあります。公式テンプレートならそうした地域特有のルールも網羅されているため、コンプライアンス上のリスクを最小限に抑えられます。
紙で運用する場合は、印刷してバインダーに挟み、ゲストに記入してもらうのが一般的です。
Excel・紙形式での作成例
ExcelやGoogleスプレッドシートを使い、横軸に「氏名」「住所」「職業」「国籍」「旅券番号」などの項目を設けて自作することも可能です。導入コストがかからないのがメリットですが、紙運用には多くのデメリットが伴います。
特に問題となるのが管理の手間とリスクです。手書き文字の判読が難しかったり、3年分の名簿とパスポートコピーの保管場所が嵩張ったりします。
また、個人情報が記載された紙を現地に置いておくことは、紛失や盗難による情報漏洩のリスクが高く、セキュリティ面からもおすすめできません。
民泊管理システムでのデジタル管理
現在の主流は、民泊管理システム(PMS)やタブレットを活用したデジタル管理です。現地のタブレットでゲスト自身に入力してもらい、パスポートもカメラで撮影するだけでデータ保存されるため、完全ペーパーレス化が見込めます。
記入漏れのアラート機能で不備を防げるほか、クラウド保存により紛失リスクも低減します。さらに、行政への定期報告に必要な集計データをワンクリックで出力できる機能を持つシステムも多く、事務作業を大幅に効率化できます。
費用はかかりますが、業務効率と法令遵守を両立できるため、最も推奨される方法です。
宿泊者名簿の保存期間と管理方法

ここでは、法律で定められた保存期間と、具体的な管理・提示のルールについて解説します。
法定保存期間(3年間)と保管場所
宿泊者名簿の保存期間は、住宅宿泊事業法・旅館業法ともに3年間です。起算点は宿泊日または作成日で、この期間は即座に提示できる状態での保管が義務付けられています。保管場所は原則として施設内または営業所ですが、管理業者への委託も可能です。
デジタル管理の場合は、現地の端末だけでなくクラウドやPCにバックアップを確保し、いつでもデータを取り出せる状態にしておく必要があります。「所在不明」は管理不備となるため注意しましょう。
個人情報保護法に基づく適切な管理
名簿には氏名やパスポート番号等の重要情報が含まれるため、個人情報保護法の遵守が必須です。紙媒体なら施錠できる保管庫で管理し、デジタルならアクセス権限の設定やウイルス対策を徹底します。
情報漏洩は法的責任や社会的信用の失墜に直結するため、第三者の目に触れないよう厳重に管理し、保存期間経過後はシュレッダーやデータ消去で確実に廃棄しましょう。
行政検査時の提示対応
保健所や警察による立入検査では、名簿の提示がほぼ確実に求められます。「直近の外国人宿泊者の情報を見せて」と言われた際、速やかに提示できるよう準備が必要です。
紙ならファイリング、デジタルなら画面表示や印刷で対応します。記載漏れやパスポート写しの不足は指導対象となります。月に一度は不備がないか確認するルールを設け、突然の検査にも落ち着いて対応できる体制を整えておきましょう。
宿泊者名簿の未作成・不備による罰則
法律上の義務である以上、違反すれば当然ながら罰則があります。
名簿作成義務違反の罰則内容
名簿の未作成や虚偽記載、保存不備には、住宅宿泊事業法で30万円以下、旅館業法で50万円以下の罰金が科されます。
さらに重いのが、業務停止や登録取消し等の行政処分です。一度の記載漏れで即取消しは稀ですが、度重なる指導無視や悪質な隠蔽が発覚すれば、民泊運営そのものができなくなります。経済的損失だけでなく、事業者としての履歴に傷がつく重大なリスクです。
よくある不備事例と対策
よくある不備は「パスポート写しの取得漏れ」です。拒否や撮影ミスを防ぐため、予約時に「法的義務であり提示必須」であることを丁寧に説明し、理解を得ておきましょう。
また「職業欄の空欄」も散見されます。システム側で必須入力設定にする等の工夫が必要です。特に無人運営ではゲスト任せにせず、チェックイン完了を確認するまで鍵番号を教えない仕組みにするなど、確実に名簿を作成させるフローを構築しましょう。
まとめ
宿泊者名簿の作成は、民泊運営における基本的な法的義務です。必要事項を漏れなく記載し、適切に保管することで、行政検査にも安心して対応できます。
紙でもデジタルでも管理は可能ですが、個人情報の取り扱いには十分な配慮が欠かせません。特に外国人宿泊者のパスポート写しや全員分の情報取得は業務負荷が高くなりがちですが、民泊管理システムを活用することで効率化が可能です。
本記事で紹介したテンプレートや管理方法を参考に、コンプライアンスを守った安全な民泊運営につなげていきましょう。