民泊標識の掲示義務とは?設置場所・サイズ・記載内容から罰則まで運営者が押さえるべきポイントについて解説

民泊を運営するには、住宅宿泊事業法に基づく標識の掲示が義務付けられています。 この標識には届出番号や連絡先など、法律で定められた情報を記載し、宿泊者や近隣住民が確認できる場所へ設置しなければなりません。掲示を怠ると罰則の対象となるため、正しいルールの理解が不可欠です。
本記事では、民泊標識の掲示義務から作成方法、設置場所、違反時の罰則まで、運営者が知っておくべき情報を詳しく解説します。
民泊標識とは?掲示が義務付けられている理由

ここでは民泊表示の掲示が法律上、義務づけられている理由と記載すべき具体的な内容について解説します。
住宅宿泊事業法における標識掲示の義務
民泊新法(住宅宿泊事業法)第13条において、住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに公衆の見やすい場所に標識を掲げなければならないと定められています。これは、その施設が行政への正規の手続きを経た適法な民泊であることを対外的に証明するためです。
かつて社会問題化したヤミ民泊(無許可営業)と区別し、宿泊者や近隣住民が安心して利用・生活できる環境を守ることが目的です。
標識には事業者の種別に応じて様式が定められており、一般的な民泊運営者(ホスト)は第4号様式、管理業者に委託している場合は第5号様式や第6号様式などを掲示します。これを掲示せずに営業することは明確な法律違反であり、行政処分の対象となります。
標識に記載すべき必須項目と記載内容
標識に記載する情報は法律で厳格に決められています。第4号様式(家主居住型などで事業者が自ら管理する場合)を例に挙げると、以下の項目が必須です。
| 届出番号および届出年月日:行政から発行された「第M○○○○号」という番号住宅宿泊事業者の氏名または名称:個人の場合は氏名、法人の場合は商号住宅宿泊事業者の連絡先:緊急時に繋がる電話番号など住宅の所在地:物件の住所 |
家主不在型で管理業者に委託している場合(第5号様式等)は、上記に加えて管理業者の名称、登録番号、連絡先も記載する必要があります。特に重要なのが緊急連絡先です。
近隣住民から騒音などの苦情があった際、即座に対応できる電話番号を明記することが、トラブルの深刻化を防ぐ第一歩となるでしょう。
民泊標識のサイズ・デザイン・素材の規定

標識はただ作れば良いわけではなく、視認性や耐久性が求められます。ここでは、推奨されるサイズや素材、具体的な作成方法について紹介します。
標識の最低サイズと推奨される大きさ
法律やガイドラインでは、標識の様式ごとに記載事項が定められていますが、物理的なサイズの厳密な指定は国レベルでは明記されていません。しかし、公衆が見やすいようにという規定があるため、一般的にはA4サイズ程度で作成することが推奨されています。
あまりに小さすぎると、記載された電話番号や届出番号が判読できず、掲示義務を果たしていないとみなされるリスクがあります。多くの自治体では、様式のテンプレートを配布しており、それをA4用紙に印刷して使用することを想定しています。
耐久性のある素材とデザインのポイント
標識は原則として屋外(玄関先や門扉)に設置するため、雨風や紫外線に耐えられる素材でなければなりません。紙に印刷しただけのものをそのまま貼ると、すぐに破れたり文字が滲んだりしてしまいます。
最も手軽な方法は、印刷した用紙をラミネート加工することです。さらに耐久性を高めるなら、アクリル板やアルミ複合板に印刷したステッカーを貼り付ける、あるいは金属プレートに直接印字するといった方法があります。
デザインに関しては、背景色と文字色のコントラストをはっきりさせ、誰でも読みやすいフォント(ゴシック体など)を使用することが重要です。独自のロゴを入れても構いませんが、必須項目の視認性を妨げないように注意しましょう。
標識の作成方法(自作・業者依頼)
標識を入手する方法は、主に自作と業者への発注の2通りです。自作の場合は、国土交通省の「民泊制度運営システム」や各自治体のホームページから様式をダウンロードし、必要事項を入力してプリンターで印刷します。これをラミネーターに通せば、数百円程度のコストで完成します。
一方、見栄えや耐久性を重視するなら、看板製作会社や民泊グッズ専門のオンラインショップに依頼するのがおすすめです。2,000円〜5,000円程度で、耐候性の高いプレートを作成してくれる業者が多数見つかります。
長期的な運営を考えているなら、数年単位で劣化しないプロ仕様のプレートを用意するのも賢い選択です。
民泊標識の正しい設置場所と掲示方法

物件のタイプ(戸建てかマンションか)によって適切な設置場所は異なります。近隣住民への配慮と防犯の観点も踏まえた、正しい掲示場所を解説します。
戸建て住宅の場合の設置場所
戸建て住宅の場合、最も適しているのは門扉(門柱)や玄関ドアの横、あるいは郵便受けなど、道路に面していて通行人が敷地外からでも確認できる場所です。
注意点として、植木や駐車車両の陰に隠れないようにすることが挙げられます。「見やすい場所」という要件を満たすためには、大人の目線の高さに設置するのが理想的です。また、強風で飛ばされないよう、強力な両面テープや結束バンド、ビスなどでしっかりと固定しましょう。家主居住型であっても、民泊営業中は必ず掲示が必要ですので、普段の生活で邪魔にならない、かつ外から見える位置を選定してください。
マンション・アパートの場合の設置場所
マンションなどの集合住宅における掲示は少し複雑です。原則として、当該住戸の玄関ドアへの掲示が必要です。
しかし、オートロック付きのマンションの場合、住戸の玄関前までは一般の人が立ち入れないため、公衆の見やすい場所という要件を満たさないと判断されることがあります。
そのため、自治体によっては住戸の玄関に加え、マンション全体のエントランスにも掲示を求めるケースがあります。ただし、エントランス等の共用部分への掲示は管理組合の許可が欠かせません。
無断で掲示すると管理規約違反でトラブルになるため、必ず事前に管理会社や理事会に相談し、指定された場所に掲示するようにしましょう。
掲示期間と取り外しのタイミング
標識の掲示義務があるのは、住宅宿泊事業の届出を行っている期間中です。つまり、実際にゲストが泊まっている日だけでなく、予約を受け付けている間は常時掲示しておかなければなりません。
逆に、廃業届を出して事業を辞めた場合や、一時的に休止する場合などは速やかに取り外しましょう。また、引越しや管理業者の変更などで記載内容が変わった場合は、古い標識のままにせず、速やかに新しい情報に書き換えたものに差し替える義務があります。
情報が古いまま放置されていると、緊急時の連絡がつかず、法令違反を問われる可能性があります。
標識掲示義務違反の罰則とリスク

標識の掲示は、軽微な手続きのように思えるかもしれませんが、違反した場合には重いペナルティが課されます。また、罰則以外にも運営上のリスクが生じます。甘く見ずに確実に対応すべき理由を解説します。
違反時の罰則内容
住宅宿泊事業法第79条の規定により、標識を掲示しなかった場合、または虚偽の内容を表示した場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があります。これは刑事罰であり、前科がつく可能性もある重い処分です。
また、いきなり罰金刑になる前に、都道府県知事から業務改善命令が出されることが一般的です。この命令に従わなかった場合は、さらに重い処分(業務停止命令や登録の取り消し)へと発展します。
たかが看板一枚ですが、掲示義務違反は「ヤミ民泊の疑いあり」とみなされ、行政の監視対象となるリスクが格段に高まります。
標識不備がもたらすその他のリスク
罰則以外の実務的なリスクとして、近隣トラブルの悪化が挙げられます。 近隣住民にとって、隣の家が見知らぬ人の出入りする民泊になることは不安なものです。
そんな中、連絡先も書かれていない「どこの誰が運営しているかわからない施設」があれば、不信感はピークに達します。
逆に、責任者の氏名や連絡先が明記された標識がしっかりと掲示されていれば、「何かあればここに連絡すれば良い」という安心感を与えられるでしょう。
標識は単なる義務ではなく、地域社会に対して「責任を持って運営しています」という意思表示をするためのツールでもあります。掲示を怠ることは、自ら近隣との信頼関係を放棄するようなものであり、通報リスクを高める結果となります。
自治体ごとの標識ルールと独自規定
民泊新法は国の法律ですが、標識のルールに関しては自治体の条例で上乗せ規制(独自ルール)が設けられているケースもあります。全国一律の基準だけで判断せず、物件がある地域のルールを確認することが不可欠です。
主要都市の独自ルール(東京都・京都市など)
例えば、東京都の特別区(23区)の多くでは、条例により「道路に面した場所」への掲示を強く求めています。マンションの3階などで営業する場合でも、1階の道路から見える位置への掲示が必須となるケースがあります。
また、景観条例が厳しい京都市では、標識の色やデザインに制限がかかることも少なくありません。派手な色は避け、町家の景観に馴染むような配慮が求められる一方で、必要な情報の視認性は確保しなければならないという難しいバランスが要求されます。
大阪市などでも、独自のステッカーの貼付を義務付けている場合があるため、必ず管轄の保健所や担当窓口のウェブサイトで最新のガイドラインを確認してください。
条例による追加記載事項の例
国の定めた必須項目に加え、自治体によっては独自の記載事項を求めている場合があります。 よくあるのが、「苦情受付窓口の対応時間」や「ゴミの出し方に関する案内」の記載です。
特に家主不在型の場合、24時間対応が可能であることを明記させるケースや、多言語での表記を推奨するケースも見られます。
また、標識とは別に、近隣住民への周知用チラシの配布や、その配布状況を示す書面の掲示を求める自治体もあります。公式の様式をダウンロードする際は、必ずその自治体が配布している最新版を使用し、勝手に項目を削除したり改変したりしないよう注意しましょう。
まとめ
民泊標識の掲示は、住宅宿泊事業を適法に運営するための基本的な義務です。届出番号や連絡先などの必須項目を正確に記載し、視認しやすい場所へ設置することで、宿泊者の安心と近隣住民の理解につながります。
違反すれば罰則を受けるだけでなく、事業継続にも支障をきたしかねません。国や自治体のルールは頻繁にアップデートされることもあるため、常に最新情報を確認し、正