ホテル売却の方法とは?高値売却のポイントを紹介

近年、インバウンド需要の急回復や不動産投資マネーの流入を背景に、ホテルの売却・M&A市場が活発化しています。
ホテル売却は旅館売却と異なり、REITや投資ファンドが主要な買い手となるケースが多く、不動産信託受益権譲渡やセール&リースバックといった独自のスキームが用いられる点が特徴です。
本記事では、ホテル売却の基礎・スキーム・評価手法・買い手の種類・メリット・運営指標・進め方・注意点・事例まで、検討時に必要な情報を網羅的に解説します。
ホテルの売却を検討中の方は、判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。
ホテル売却の基礎知識と旅館との違い

ホテル売却の検討にあたっては、まずホテルと旅館の制度上の違いや、ホテルの種類による特性を理解することが重要です。
ここでは、定義・種類・売却が増えている背景の3つの観点から基礎知識を整理します。
旅館業法上のホテル・旅館の定義の違い
ホテルと旅館は、旅館業法により明確に区別されています。
客室面積で見ると、ホテルは1室9㎡以上、旅館は1室7㎡以上と基準が異なります。
また、客室数ではホテルは10室以上、旅館は5室以上が必要です。
構造面では、ホテルは洋室主体、旅館は和室主体が基本となります。
さらに、ホテルでは寝具・洗面・トイレといった洋式の設備基準が定められており、国際標準に近いサービス基盤が求められます。
つまり、ホテルは規模が大きく洋室中心の宿泊施設、旅館は比較的小規模で和室中心の宿泊施設、という違いが法的にも区別されているのです。
売却スキームや評価手法もこの違いを前提に設計されます。
ホテルの種類(ビジネス・シティ・リゾート・カプセル)
ホテルは用途や客層によって複数のタイプに分類され、売却時の評価軸や買い手の種類にも影響します。
ビジネスホテルは出張客向けの中価格帯施設で、駅近立地が価値の中心となります。
シティホテルは都市部の高級施設で、宴会場やレストランなど複合機能を持ち、ブランド価値が高評価につながります。
リゾートホテルは観光地立地で、季節変動の大きさと自然・景観が特徴です。
カプセルホテルは低価格・高回転型のビジネスモデルで、近年は外国人旅行者やコスパ志向客から注目されています。
ホテルタイプごとに買い手の戦略が異なるため、売却前の整理が不可欠です。
ホテル売却で検討される主な理由と近年の動向
ホテル売却の主な理由には、事業承継・経営戦略の見直し・資産の有効活用・財務改善などがあります。
近年は、インバウンド需要の急回復を背景に市場価値が上昇し、絶好の売却タイミングとなっている施設も多く見られます。
一方、コロナ禍で業績が悪化したホテルが海外ファンド・投資家へ売却される動きも加速しています。
また、旅行スタイルの多様化(個人旅行・OTA予約の浸透など)に対応するため、デジタル戦略強化を目的としたM&Aも活発化しています。
ホテル業界は今後も再編が進むと見込まれ、戦略的な売却の好機を迎えているといえるでしょう。
ホテル売却で用いられる主なスキーム

ホテル売却には、不動産売買とは異なる独自のスキームが複数存在します。
ここでは、株式譲渡・事業譲渡・不動産信託受益権譲渡・セール&リースバックの4つの代表的な手法を解説します。
株式譲渡によるホテル運営会社ごとの売却
株式譲渡は、ホテルを運営する会社の株式を買い手に譲渡し、会社ごと売却する手法です。
許認可・従業員の雇用・取引先契約をそのまま承継できるため、最も手続きがシンプルなスキームといえます。
個人株主の譲渡所得は申告分離課税(税率約20%)で、税負担を抑えやすい点もメリットです。
ただし、買い手は会社の負債やリスクを丸ごと引き継ぐため、詳細なデューデリジェンスが不可欠となります。
中小規模のホテルで頻繁に用いられる王道スキームです。
事業譲渡によるホテル事業単位の売却
事業譲渡は、ホテル事業のみを切り出して譲渡する手法で、運営法人は売り手側に残ります。
特定の事業や物件のみを売却したい場合や、簿外債務リスクを切り離したい場合に用いられます。
ただし、許認可・契約・雇用は個別に承継手続きが必要となり、株式譲渡より手続きが煩雑です。
売り手の法人には法人税(約30%)が課され、株式譲渡より税負担が重くなる傾向があります。
複数事業を運営する企業が、ホテル事業のみを切り離して再編する際に多用されます。
所有と運営を分離する不動産信託受益権譲渡
不動産信託受益権譲渡は、ホテル建物・土地を信託銀行に信託し、信託受益権を譲渡する手法です。
所有と運営を分離できるため、不動産部分のみを投資家に売却し、運営は元のオーナーが続けるといった柔軟な設計が可能となります。
REITやファンドが買い手となるケースで頻繁に用いられ、登録免許税・不動産取得税の負担軽減といった税務メリットもあります。
比較的大規模なホテル取引で採用されることが多く、専門家の関与が不可欠なスキームです。
信託銀行を介在させるため、契約関係が複雑になる点には留意が必要です。
セール&リースバックによる売却
セール&リースバックは、ホテルを売却した上で、売却先から賃借して運営を継続する手法です。
バランスシートのスリム化が図れ、売却で得た資金を新規投資・借入返済・財務改善に充てられる点が大きな魅力です。
オペレーターは運営を継続できるため、従業員の雇用・ブランド・顧客基盤を守りながら現金化を実現できます。
近年、不動産ファンドやREITが買い手となるケースが増えており、所有から運営特化への転換を図るホテル経営者の有力な選択肢となっています。
賃料の水準や賃借期間、契約条件などは慎重な交渉が求められる点にも注意が必要です。
関連ページ:民泊・ホテル・旅館向けM&A仲介サービス|Tabiji Partners
ホテルの売却価格を算定する4つの評価手法

ホテルの売却価格は、収益性・将来性・資産価値を多角的に評価して算定されます。
ここでは、業界で広く用いられる4つの評価手法を整理して解説します。
収益還元法(NOI÷Cap Rate)による評価
収益還元法は、ホテルが生み出す純収益(NOI:Net Operating Income)を還元利回り(Cap Rate)で割って物件価値を算定する手法です。
計算式は「物件価値=NOI÷Cap Rate」で表されます。
例えば、年間NOIが3億円、Cap Rateが5%のホテルなら、評価額は60億円となります。
REITや不動産ファンドが用いる代表的な手法で、収益性が安定しているホテルほど評価が高まります。
立地・グレード・需要動向によりCap Rateは変動するため、マーケット環境の見極めが重要です。
DCF法による将来キャッシュフローの評価
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)は、ホテルが将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する手法です。
通常、5〜10年分のキャッシュフローを予測し、割引率(WACC等)を用いて現在価値を算定します。
長期的な収益性や成長性を反映できる点が最大の特徴で、特にリブランディングやリノベーション計画を持つホテルの評価に適しています。
ファンドや上場企業がM&Aを行う際に、精緻な企業価値評価として用いられることが多い手法です。
EBITDAマルチプル法による評価
EBITDAマルチプル法は、ホテルのEBITDA(税引前・利払い前・減価償却前利益)に業界の倍率(マルチプル)を乗じて評価額を算出する手法です。
計算式は「EBITDA×倍率(通常6〜10倍)」となります。
ホテル業界では、設備投資・減価償却の影響を排除してキャッシュ創出力を比較できるため、業界共通の評価指標として広く用いられます。
類似企業のEBITDAマルチプルを参考にすることで、実勢相場に近い評価額を把握しやすい点も大きなメリットです。
時価純資産+のれん代による評価
時価純資産+のれん代は、中小規模ホテルのM&Aで広く用いられる、シンプルかつ実用的な評価手法です。
時価純資産(資産-負債を時価評価)に、のれん代(年間営業利益×2〜5年分)を加算して評価額を算出します。
例えば、時価純資産5億円、年間営業利益1億円(3年分)なら、評価額は8億円となります。
収益還元法やDCF法ほど精緻ではないものの、計算がシンプルで売り手・買い手双方が理解しやすいため、初期段階の概算評価として有効です。
ホテルの買い手となる企業・投資家の種類

ホテルの買い手は多様で、それぞれ異なる戦略と評価基準を持っています。
ここでは、代表的な4つの買い手タイプと、それぞれの特徴を整理して解説します。
大手ホテルチェーン・オペレーター
大手ホテルチェーン・オペレーターは、ホテル買収における代表的な買い手です。
アコー、ヒルトン、マリオット、ホシノリゾート、藤田観光など、国内外の大手企業がブランド拡張やエリア展開を目的にM&Aを実行しています。
買い手側のメリットは、自社ブランドへの転換による収益力強化、ノウハウ移植、立地の補完などです。
売り手側にとっては、ブランド傘下入りで集客力向上が期待できる点が大きな魅力となります。
また、運営継続を前提とした買収のため、従業員雇用が安定的に承継されやすい点も特徴です。
国内外の不動産投資ファンド
国内外の不動産投資ファンドは、ホテル市場で極めて活発な買い手です。
ベインキャピタル、ブラックストーン、KKR、ローンスター、ベントールグリーンオークなど、世界的なPEファンドが日本のホテルを積極取得しています。
彼らは収益還元法やDCF法で精緻な企業価値評価を行い、買収後はリブランディングや運営効率化で価値を高め、5〜10年で売却(Exit)するのが基本戦略です。
コロナ禍以降、割安な価格で取得したホテルを高値で売却するファンドの動きが顕著となっています。
売り手にとっては、市場価格を上回る譲渡価格を引き出せる可能性が高い、有力な交渉相手となります。
J-REITや私募REITなどの投資法人
J-REIT(上場不動産投資信託)や私募REITは、ホテルの長期保有を前提とした安定的な買い手です。
ジャパン・ホテル・リート、星野リゾート・リート、インヴィンシブル投資法人など、ホテル特化型のREITが複数存在し、市場の主要プレイヤーとなっています。
REITはCap Rateベースで物件を評価するため、収益性の安定したホテルほど高評価が得られます。
不動産信託受益権譲渡やセール&リースバックのスキームと組み合わせて取引されるケースが多く、長期安定的な売却先として注目されています。
セール&リースバックでは、運営継続と現金化を両立できる仕組みが確立されています。
異業種企業・海外投資家
異業種企業や海外投資家もホテル買収市場の重要なプレイヤーです。
国内では、ニトリ・西武HD・東急など、不動産・小売・鉄道系の異業種大手がホテル事業に参入しています。
海外投資家では、中国・シンガポール・中東などのソブリンウェルスファンドや富裕層が、日本のホテルを積極取得する動きが顕著です。
インバウンド需要を狙った戦略的買収が中心で、独自の集客ネットワークを活用した付加価値提供が期待されます。
売り手の選択肢が大きく広がっている市場環境にあるといえます。
ホテルを売却する主なメリット

ホテル売却には、経営者・従業員・事業の三方にプラスとなるメリットが複数あります。
ここでは、特に重要な3つのメリットを整理して解説します。
資産の現金化と次の投資資金の確保
ホテル売却の最大のメリットは、長年保有してきた不動産・事業資産を一括で現金化できる点です。
ホテルは大規模な資産であるため、売却により数億円〜数百億円規模のキャッシュを獲得できるケースもあります。
獲得した資金は、新規事業の立ち上げ、別エリアへのホテル投資、不動産ポートフォリオの再構築、借入金の返済などに活用可能です。
事業の選択と集中を図るうえで、ホテル売却は強力なファイナンシャル戦略となります。
また、上場企業であればROEやROAなどの財務指標改善にもつながり、株主価値向上の観点からも評価される動きとなります。
経営者個人にとっても、創業者利益の獲得や引退後の生活資金確保につながる重要な出口戦略です。
設備投資負担や運営リスクからの解放
ホテル運営には、継続的な大規模修繕・設備更新・人材確保といった重い負担が伴います。
築古ホテルでは、外壁修繕・空調更新・客室リノベーションだけで数億〜数十億円の支出が必要となるケースもあります。
売却することで、これらの設備投資負担や運営に伴うリスクから完全に解放されます。
また、人手不足・燃料費高騰・最低賃金の引き上げなど、宿泊業特有の経営圧力からも解放されます。
コロナ禍のような外部ショックや、災害・パンデミックといった事業継続リスクからも切り離せる点は大きな安心材料です。
経営者の高齢化や体力的な負担を考慮した出口戦略としても、極めて合理的な選択肢です。
従業員の雇用継続とブランドの存続
ホテル売却は、従業員の雇用継続とブランドの存続を実現する重要な手段でもあります。
廃業や事業整理とは異なり、M&Aによる売却であれば従業員の雇用は買い手企業に承継されます。
規模の大きい買い手に売却した場合、雇用条件・福利厚生・キャリアパスがむしろ改善されるケースも少なくありません。
また、長年築いてきたホテルのブランドや伝統が、買い手の経営資源によって新たな段階で発展することも期待できます。
創業時の理念やサービス品質を尊重してくれる買い手と組めば、ブランドの永続発展を実現できる点も魅力です。
経営者として、最後まで従業員と事業に対する責任を全うできる選択肢です。
売却価値を高めるために整えるべき運営指標

ホテル売却で高値を引き出すには、ホテル特有の運営指標を可視化し、買い手にアピールすることが不可欠です。
ここでは、必ず押さえるべき3つの主要指標を解説します。
稼働率(OCC)を可視化し改善の余地を示す
稼働率(OCC:Occupancy Rate)は、客室の利用率を示すホテル運営の最重要指標です。
計算式は「販売客室数÷販売可能客室数×100」で、ホテル業界では70〜80%以上が好調水準とされます。
売却時には、過去3〜5年分のOCC推移と季節変動データを整備し、買い手に客観的な実績として提示できる状態にしておきましょう。
また、「現状のOCCで利益を出せているうえに、改善余地がまだある」ことを示せれば、買い手は将来の収益向上ポテンシャルを評価し、譲渡価格を引き上げる傾向があります。
曜日別・部屋タイプ別など、より細かい粒度での可視化も買い手の関心を引く要素です。
OCC可視化は、価格交渉を有利に進めるための土台です。
ADR(平均客室単価)とRevPARの実績を整理する
ADR(平均客室単価)は、販売した客室1室あたりの平均販売単価で、価格戦略の成果を示す指標です。
RevPAR(販売可能客室1室あたり収益)は、ADR×OCCで算出され、ホテルの総合的な収益力を示す最重要KPIです。
これらを過去のデータと比較し、業界平均や競合との位置関係を整理しておくことで、買い手への説得力が増します。
インバウンド需要の高まりでADRが上昇している局面では、その実績を強調することが高値売却の決め手となります。
また、ダイナミックプライシングなどの価格戦略の効果を数値で示せれば、運営ノウハウの価値もアピールできます。
売却資料(IM)に必須の指標として、必ず整備しましょう。
GOP(売上高営業粗利益)など収益性指標を整える
GOP(Gross Operating Profit:売上高営業粗利益)は、ホテル運営の効率性を示す重要な収益性指標です。
売上高から運営費用を差し引いた利益で、GOPR(GOP÷売上高)で見ると、業界では30〜40%以上が好調水準とされます。
GOPの推移を整理し、コスト管理の徹底や効率的な運営体制を実証できれば、買い手の評価が大きく向上します。
また、EBITDAやNOIといった企業価値評価で用いる指標も併せて整備することで、収益還元法・EBITDAマルチプル法など複数の評価手法での査定がスムーズになります。
部門別収益(客室・F&B・宴会)の内訳まで可視化することで、買い手の事業価値判断を後押しします。
数字の透明化が、高値売却への最短ルートです。
ホテル売却の進め方

ホテル売却は、4つのフェーズを順を追って進めるのが基本となります。
ここでは、各ステップで必要となる手続きとホテル特有の留意点を解説します。
アドバイザー選定とノンネームシートの作成
ホテル売却の第一歩は、M&Aアドバイザーや仲介会社の選定です。
宿泊業特化のアドバイザーを選ぶことで、業界知識を活かした最適な戦略設計と、買い手ネットワークへのアクセスが得られます。
アドバイザー契約後は、ノンネームシート(匿名概要書)を作成し、社名や具体的所在地を伏せた形で買い手候補にアプローチします。
売却情報が外部に漏れるのを防ぐため、ノンネームの段階で関心の高い候補先を絞り込むことが重要です。
アドバイザーの実績や宿泊業界での成約事例を確認し、相性の良い専門家と長期的に取り組みましょう。
候補先選定と基本合意書の締結
ノンネームシートに反応した買い手候補とは、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、詳細情報(IM:インフォメーション・メモランダム)を開示します。
IMには、財務指標・運営指標(OCC・ADR・RevPAR・GOP)・物件情報・許認可情報などが詳細に記載されます。
条件面で大筋合意に至った場合、基本合意書(LOI/MOU)を締結し、譲渡価格・スケジュール・独占交渉権などを定めます。
通常、買い手側に独占交渉権が付与され、デューデリジェンスへと進みます。
買い手の真剣度を測る重要な節目となるフェーズです。
ホテル特有のデューデリジェンス
ホテル売却のDDでは、通常のM&Aより詳細な調査が行われます。
財務・法務・税務・労務に加え、不動産・建物の劣化状況・耐震性・消防設備・運営委託契約・予約システム・OTA契約まで多角的に精査されます。
ホテル特有のリスク(大規模修繕の必要性、許認可の更新条件、PMS等のシステム承継など)が浮き彫りになることもあるため、売り手側も事前に資料を整えておくことが不可欠です。
また、買い手側からの追加質問にも誠実に対応する姿勢が、信頼関係構築につながります。
通常1〜2か月を要するため、計画的なスケジュール管理が求められます。
最終契約・クロージングと旅館業許可の手続き
DD完了後は、最終契約書(SPA等)を締結し、譲渡価格・表明保証・補償条項などを最終確定します。
契約締結と同時に譲渡代金の支払いと事業の引き渡し(クロージング)が行われます。
ホテル特有の最重要論点として、旅館業法に基づく許認可は売却時に白紙に戻るため、事業譲渡や不動産売却の場合は買い手側で改めて取得する必要があります。
保健所・消防署への申請と現地確認に数か月を要するため、クロージングのタイミング設計には許認可スケジュールを必ず織り込みましょう。
クロージング後はPMI(統合プロセス)を円滑に進め、運営価値の維持・向上に取り組むことが重要です。
関連ページ:不動産法人→IT法人への事業譲渡|M&A事例
ホテル売却で押さえておくべき注意点

ホテル売却には、通常の不動産売買にはない論点が複数あります。
ここでは、許認可・運営契約・修繕計画という3つの注意点を整理して解説します。
許認可は売却時に白紙に戻り買い手側で再取得が必要
ホテル売却で最も重要な論点が、旅館業法に基づく許認可の取り扱いです。
事業譲渡や不動産売却の場合、許認可は売却時に白紙に戻り、買い手側で再取得が必要となります。
再取得には、保健所・消防署・建築主事への申請と、施設基準の適合確認、現地検査などが必要で、通常2〜3か月を要します。
株式譲渡の場合は運営法人がそのまま継続するため、原則として許認可は引き継がれます。
売却スキームの選択にあたっては、許認可承継のスムーズさも重要な判断基準となります。
クロージング前に許認可手続きの段取りを買い手・売り手・専門家で綿密に協議しましょう。
運営委託契約や予約システムの承継条件
ホテルでは、運営委託契約(MC契約)・フランチャイズ契約・OTA契約・PMS(予約管理システム)契約など、複雑な契約関係が網の目のように絡み合っています。
売却の際には、これらの契約が買い手に円滑に承継できるかどうかを事前に精査する必要があります。
契約上の譲渡禁止条項やチェンジ・オブ・コントロール条項(支配権変更条項)があると、契約相手の同意取得が求められるため、交渉に時間がかかることもあります。
予約サイト(楽天トラベル、じゃらん、Booking.com等)のアカウントや評価レビューも重要な無形資産であり、承継方法を契約書で明確化しておくことが必須です。
事前のチェックリスト整備が円滑な引き継ぎの鍵となります。
大規模修繕計画や設備老朽化リスクの開示
ホテル建物は経年劣化が進みやすく、大規模修繕や設備更新の負担が買い手にとって大きなリスクとなります。
外壁・空調・配管・客室・共用部の修繕計画を長期修繕計画として整理し、買い手に開示することが、信頼関係構築と価格交渉の前提です。
短期間で多額の修繕費が発生する見込みがある場合、譲渡価格から差し引かれるか、特別な保証条項が設定されることがあります。
誠実な情報開示を行い、買い手とともに修繕計画を共有しながら売却を進めることが、トラブル回避と成約率向上につながります。
また、設備の保守履歴や点検記録などの資料を整理して提示することで、買い手の安心感を高めることができます。
リスクを隠さず示す姿勢が、円滑な取引には不可欠です。
ホテル売却の事例

実際のホテル売却事例を知ることで、スキーム選択や買い手戦略の具体像を把握できます。
ここでは、業界で注目を集めた3件の代表的な事例を紹介します。
ロイヤルホテルによる不動産ファンドBGOへの譲渡
ロイヤルホテル(リーガロイヤルホテルブランド)は、米系不動産投資ファンドベントールグリーンオーク(BGO)との資本業務提携・譲渡を発表しました。
ロイヤルホテルは大阪・京都・東京・成田などで主要なホテルを運営する伝統的な日本のホテルチェーンです。
国内外の不動産投資ファンドが日本の老舗ホテルブランドを取得する動きを象徴する案件として、業界で大きな注目を集めました。
BGOは資本投入により施設のリブランディングと収益性向上を進める方針で、伝統と国際資本の融合を図る代表事例となっています。
売り手にとっては経営資源と国際的ノウハウの確保、買い手にとっては優良物件への参入機会となる、ウィンウィンの取引です。
海外ファンドが日本のホテル市場へ積極参入する潮流を示す注目の取引です。
リゾートトラストのグループ内再編M&A
リゾートトラストは、会員制リゾートホテル「エクシブ」「ベイコート倶楽部」を中心とする国内大手のホテル事業者です。
同社はグループ内再編やM&Aを通じて事業領域の拡大とブランドポートフォリオの強化を進めています。
近年では、メディカル分野や観光関連分野への進出を視野に、異業種を含む戦略的M&Aを実行しています。
会員制ビジネスモデルとM&A戦略を組み合わせた事業拡大は、ホテル業界における再編戦略の好例として参考にされています。
成長戦略の一環としてM&Aを位置づけ、買収後の統合・シナジー創出にも積極的に取り組む姿勢が評価されています。
国内大手による戦略的M&Aの代表例といえるでしょう。
大手ホテルチェーンによる中小ホテルの買収
大手ホテルチェーンによる中小ホテル買収は、国内ホテル業界で活発に行われているM&Aパターンです。
アコー、マリオット、ヒルトンなどのグローバルブランドが、国内の中小ホテルを買収して自社ブランドに転換するケースが増えています。
また、星野リゾート、藤田観光、共立メンテナンスなど、国内大手も地方の老舗ホテルや旅館を傘下に収める動きを強めています。
売り手の中小ホテルにとっては、ブランド力と集客ノウハウを活用した収益向上、買い手にとってはエリア展開と物件取得の効率化という、ウィンウィンのモデルです。
事業承継問題を抱える中小ホテルにとって、大手傘下入りは事業存続と成長を両立させる有力な選択肢となります。
中小ホテルの事業承継・成長戦略の典型例として参考になるでしょう。
関連ページ:民泊・ホテル・旅館向けPMI支援サービス|Tabiji Partners
まとめ
ホテル売却は、スキーム・評価手法・買い手の選択肢が多様であり、旅館売却以上に専門性の高い領域です。
収益還元法・DCF・EBITDAマルチプルなど複数の評価軸を理解し、OCC・ADR・RevPAR・GOPといった運営指標を整備することが、高値売却への近道となります。
REITや投資ファンドを含む多様な買い手にアプローチするには、宿泊業特化のM&A仲介会社の活用が極めて有効です。
ホテル・旅館・民泊の譲渡や買収をご検討の方は、宿泊業特化のM&A仲介サービスへお気軽にご相談ください。
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Tabiji Partnersは日本唯一の民泊M&A専門仲介会社です。Airbnbスーパーホスト経験のあるアドバイザーが、平均3ヶ月での成約を実現。完全成功報酬制、ご相談は無料です。