民泊を廃業する手順における必要書類や手続きの流れと注意点を紹介

民泊運営を続けるか廃業するかで悩む運営者は、近年急増しています。
しかし、民泊の廃業は単に営業をやめれば済むものではなく、法律に基づく届出・契約整理・税務処理・保険解約など、多岐にわたる実務手続きが必要です。
本記事では、民泊廃業が増える背景・営業形態別の廃業手続き・住宅宿泊事業法の廃業届提出の流れ・契約整理と費用・税務と保険・放置リスク・負債がある場合の清算・代替選択肢まで、廃業判断と実務に必要な情報を網羅的に解説します。
民泊の廃業を検討中の運営者の方は、ぜひ参考にしていただければと思います。
正しい手続きで廃業を進めることが、将来の再起や新たな事業展開への最も確実な道となります。
民泊廃業が増えている背景

近年、民泊の廃業件数が増加しており、業界全体の構造変化を象徴する動きとなっています。
ここでは、廃業が増えている背景と、廃業を検討すべきタイミングを整理して解説します。
市場環境の変化を理解することで、自身の運営継続判断をより的確に行えるようになります。
規制強化と運営コスト上昇による廃業の増加
2025年6月時点で、観光庁発表のデータによれば民泊事業の廃業件数は累計1万件を超えたとされ、これは届出済み事業の約3〜4割に相当します。
廃業増加の主な要因は、自治体規制の強化、運営コストの上昇、競合過多による単価下落といった構造的問題です。
2025-2026年に施行される豊島区・大田区・墨田区の規制強化により、住宅専用地域での営業や遠隔管理が困難となり、撤退を選ぶ事業者が更に増加する見込みです。
また、人件費高騰による清掃費の上昇、OTA手数料15%、運営代行費15〜30%といったコスト構造の悪化が、収益性をさらに圧迫しています。
コロナ禍以降に参入した新規事業者を中心に、想定通りの収益が出ず、計画的撤退を迫られる事例が多く見られます。
業界の構造的変化が今後も続くと見込まれるため、参入時から廃業出口戦略まで含めた長期視点の計画が重要となります。
廃業を検討するタイミング
廃業を検討すべきタイミングは、運営状況によって異なります。
代表的な検討タイミングは、赤字が6ヶ月以上連続している場合、改善策を3〜6ヶ月実行しても効果が出ない場合、自治体規制で営業日数が大幅減少する場合などです。
また、経営者の高齢化や本業優先などのライフスタイル変化を理由に、計画的な廃業を選ぶケースも増えています。
サンクコスト(これまで投じた費用)に固執せず、将来の損益で判断することが、適切な意思決定の前提となります。
廃業判断は感情に流されがちですが、毎月の収支データを客観的に評価し、撤退コストと継続損失を比較したうえで決断しましょう。
M&Aによる事業譲渡など、廃業以外の選択肢も並行検討することで、最善の出口戦略が見えてきます。
賃貸契約の更新タイミングや繁忙期との兼ね合いも踏まえ、最適な廃業時期を選択することが、損失最小化につながります。
民泊の営業形態ごとに異なる廃業手続き

民泊の廃業手続きは、運営している営業形態(法律根拠)によって異なります。
ここでは、住宅宿泊事業法・特区民泊・旅館業法という3つの主要形態における廃業手続きを整理して解説します。
自身の運営形態を正確に把握し、適切な手続きを選択することが、円滑な廃業の前提条件となります。
住宅宿泊事業法(民泊新法)で運営している場合
住宅宿泊事業法(民泊新法)で運営している場合、廃業等届出書を都道府県知事へ提出する必要があります。
提出期限は事業を廃止した日から30日以内で、遅延すると行政指導の対象となります。
届出は民泊制度ポータルサイト(民泊制度運営システム)を通じた電子申請が可能で、紙ベースでの提出も併用できます。
また、住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者との契約関係にあった場合は、それぞれに廃業を通知する必要があります。
電子届出の場合は、システムにログインして必要事項を入力するだけで完了するため、最も簡便な手続きとなります。
詳細手順は次のh2セクションで解説しますので、参考にしてください。
民泊新法は2018年6月の施行で全国共通の制度であり、廃業手続きも全国一律のルールが適用されます。
特区民泊(国家戦略特区)で運営している場合
国家戦略特区法に基づく特区民泊で運営している場合、特定認定の取消手続きが必要となります。
特区民泊は大阪市・八尾市・東京都大田区・北九州市・新潟市・千葉市などで認定されており、最低宿泊日数2泊3日以上の営業形態です。
廃業時は、認定権者である自治体(大阪市なら大阪市保健所など)への特定認定取消申請書の提出が必要です。
また、特区民泊では周辺住民への通知が認定要件となっているケースが多く、廃業時にも近隣への報告を求められることがあります。
提出期限や必要書類は自治体ごとに異なるため、運営している自治体の担当窓口で事前確認することが重要です。
申請から認定取消までは数週間〜1ヶ月程度を要するため、計画的に進めましょう。
特区民泊では民泊新法とは異なる手続きとなるため、十分な余裕を持ったスケジューリングが必要です。
旅館業法(簡易宿所等)で運営している場合
旅館業法(簡易宿所営業)で運営している場合、営業の廃止届出を保健所長へ提出する必要があります。
廃止届の提出期限は、廃止の日から10日以内と民泊新法より短い設定です。
また、消防法に基づく消防用設備等の届出変更、建築基準法の用途変更が必要だった場合の手続きもあわせて確認すべきです。
旅館業の廃業届出時には、営業許可証の返納も必要となります。
営業許可証を紛失している場合は、紛失届出が併せて求められるため事前確認が必要です。
旅館業法の廃業手続きは民泊新法より厳格な側面があり、保健所での確認や指導を経て完了する流れとなります。
営業形態別に手続きが大きく異なるため、自身の運営根拠法を正確に把握したうえで対応しましょう。
なお、廃業ではなく事業譲渡を選ぶ場合は、2023年12月の旅館業法改正により許認可承継が可能となっており、買い手側の手続き負担も大幅に軽減されています。
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住宅宿泊事業法の廃業届提出の流れ

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく廃業届(廃業等届出書)の提出は、廃業実務の中核となる手続きです。
ここでは、記載事項・提出期限・届出義務者・電子届出という4つの観点から、具体的な手順を整理して解説します。
正確な手続きを理解することで、トラブルなくスムーズな廃業を実現できます。
廃業等届出書の記載事項
廃業等届出書には、所定の様式に従って必要事項を記載します。
主な記載項目は、届出住宅の所在地・住宅宿泊事業者の氏名(法人名)・住所・届出番号・廃業年月日・廃業の理由などです。
また、法人の場合は代表者氏名・法人番号もあわせて記入が必要となります。
様式は厚生労働省・観光庁・国土交通省の三省共管で定められており、都道府県のホームページや民泊制度ポータルサイトからダウンロード可能です。
記載漏れがあると差し戻されるため、提出前にチェックリストで確認しましょう。
誤記入や記載漏れは行政手続き上の信用にも影響するため、丁寧な記入が求められます。
事業を廃止した日から30日以内の提出期限
廃業等届出書は、事業を廃止した日から30日以内に提出する義務があります。
提出先は、届出住宅の所在地を管轄する都道府県知事(政令指定都市・中核市・特別区はその市長・区長)です。
30日を超えて提出すると、法令違反として行政指導や過料の対象となる可能性があります。
提出方法は、民泊制度ポータルサイトでの電子申請、郵送、窓口持参から選択可能です。
実際の提出にあたっては、廃業日を明確に確定したうえで、提出期限から逆算して計画的に手続きを進めることが重要です。
余裕を持って手続きを進めることで、書類の不備や予期せぬトラブルにも対応しやすくなります。
死亡・解散・破産など届出義務者の区分
廃業等届出書の届出義務者は、廃業の事由によって異なります。
通常の廃業の場合は、住宅宿泊事業者本人(または法人代表者)が届出義務者となります。
事業者が死亡した場合は相続人、法人が解散した場合は清算人、法人が破産した場合は破産管財人が届出義務者です。
合併により消滅した場合は、合併後存続する法人または合併により設立された法人が届出義務者となります。
届出義務者の区分を間違えると差し戻されるため、自身の状況に応じた区分を確認したうえで届出しましょう。
特に相続や破産が関わるケースでは、専門家への相談で正確な手続きが進められます。
民泊制度ポータルサイトでの電子届出
民泊制度ポータルサイト(民泊制度運営システム)を活用すれば、電子申請で廃業届を提出できます。
システムにログインし、「廃業等届出」のメニューから必要事項を入力するだけで申請が完了します。
電子申請のメリットは、24時間いつでも申請可能、印刷・郵送の手間が不要、提出履歴がシステム上に保存されることです。
また、書類の不備や記入漏れがあれば、システム上で指摘されるため、紙ベースよりミスが少ない傾向があります。
申請時には届出時に発行された届出番号とログインID・パスワードが必要となるため、事前に確認しておきましょう。
システムの操作に不安がある場合は、自治体窓口への電話相談で具体的な操作方法を確認できます。
廃業時に整理すべき契約と発生する費用

民泊廃業時には、行政手続き以外にも多岐にわたる契約整理が必要となります。
ここでは、賃貸借契約・代行契約・OTA・物品処分という4つの観点から、整理すべき項目と発生する費用を解説します。
事前の段取りが、廃業時の混乱とコスト増を防ぐ鍵となります。
賃貸借契約の解約予告と原状回復費用
賃貸物件で運営している場合、貸主への解約予告が必要です。
通常、解約予告は1〜3ヶ月前に行うのが一般的で、契約書の規定に従いましょう。
解約予告期間より早く退去する場合は、残存期間の家賃相当額の違約金が発生することがあります。
また、退去時には原状回復費用が発生し、民泊運営による壁紙・床・水回りの傷み具合によって数十万円〜数百万円となるケースもあります。
敷金から差し引かれるのが一般的ですが、敷金で足りない場合は追加負担が必要です。
退去前に貸主と立会いを行い、原状回復範囲と費用を事前に確認しておきましょう。
事前見積もりを取得しておくことで、想定外の追加請求を防ぐことができます。
管理代行会社との委託契約の解除
管理代行会社・住宅宿泊管理業者との委託契約も、廃業時に解除する必要があります。
契約書に基づき、解約予告期間(通常1〜3ヶ月前)を守って通知することが重要です。
解約予告期間より早く解除する場合、違約金や残存期間の手数料が発生することがあります。
また、清掃会社・リネン業者・予約管理システム(PMS)との契約も、それぞれ解約手続きが必要となります。
契約解除に伴う費用は、業者ごとに数万円〜数十万円程度となるケースが多いため、事前に総額を試算しましょう。
解約タイミングを揃えることで、無駄な月額費用の発生を抑えられます。
サブスクリプション型のサービスは自動更新されることが多いため、解約手続きを忘れないよう注意しましょう。
OTA(Airbnb等)の掲載停止と予約対応
Airbnb・Booking.com・楽天STAYなどのOTAでも、廃業に伴う掲載停止手続きが必要です。
各OTAの管理画面から、リスティングの非公開化または削除を行いましょう。
廃業日以降の既存予約がある場合、ゲストへの早期連絡とキャンセル対応・代替施設の案内が必要となります。
OTAのキャンセルポリシーによっては、ホスト都合キャンセルとしてペナルティ(キャンセル料負担・スーパーホスト剥奪等)が発生することがあります。
廃業計画段階から予約受付を停止し、既存予約を消化してから廃業日を確定する流れがトラブル防止につながります。
また、ゲストとの誠実なコミュニケーションが、最後まで良好な評価を維持するための鍵となります。
家具家電やリネン類の処分方法
民泊運営で導入した家具家電・リネン類・アメニティなどの処分も、廃業実務の重要な部分です。
廃棄処分の場合、自治体の粗大ごみ処分費用や産廃業者への依頼費用で数万円〜数十万円の支出となります。
売却処分の場合は、リサイクルショップ・ヤフオク・メルカリなどを活用し、初期投資の一部を回収できる可能性があります。
状態の良い物品はM&Aによる事業譲渡に組み込んで承継すれば、廃棄費用を回避しつつ譲渡対価に含められます。
また、寄付・地域コミュニティへの提供も社会貢献的な選択肢として検討できます。
処分方法によって費用や手間が大きく異なるため、計画的に対応しましょう。
廃業時に必要な税務と保険の手続き

民泊廃業時には、税務署への届出と保険の解約も忘れずに対応する必要があります。
ここでは、個人事業の廃業届・青色申告取りやめ・保険解約の3つの手続きを整理して解説します。
各種届出を漏れなく行うことで、税務トラブルや保険料の無駄払いを防げます。
税務署への個人事業の廃業届出書
個人で民泊を運営していた場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出する必要があります。
提出期限は、廃業日から1ヶ月以内です。
届出書の様式は国税庁ホームページからダウンロード可能で、所轄税務署への郵送・窓口持参・e-Taxで提出できます。
記載事項は、氏名・住所・廃業日・廃業理由・事業所所在地などです。
提出を怠ると、確定申告時のトラブルや所得税法上の不利益につながる可能性があります。
また、消費税の課税事業者であった場合は、別途「事業廃止届出書」の提出も必要となるため、税理士などの専門家に相談しながら対応するのが安全です。
都道府県や市町村に対する事業税・住民税関連の届出も、忘れずに確認しましょう。
青色申告取りやめ届出書の提出
青色申告で確定申告を行っていた個人事業主は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出も必要となります。
提出期限は、取りやめようとする年の翌年3月15日までです。
青色申告の取りやめは、特別控除(65万円)などのメリットがなくなることを意味するため、廃業後も別事業で青色申告を継続するなら届出は不要です。
完全に事業活動を終了する場合は、未提出のまま放置せず、早めに届出して税務関係を整理しましょう。
また、廃業年度の確定申告では、廃業日までの所得を計算し、棚卸資産の処分や減価償却の最終処理も忘れずに行います。
青色申告は適切に取りやめ手続きを行うことで、後年のトラブルを未然に防げます。
申告内容に不安がある場合は、税理士の確認を受けることが安心です。
民泊保険や火災保険の解約手続き
民泊運営期間中に加入していた民泊専用保険(賠償責任保険等)・火災保険・施設賠償保険などの解約手続きも必要です。
保険会社へ連絡し、廃業日以降の保険解約を依頼しましょう。
未経過分の保険料が返戻されるケースが多いため、解約による経済的損失は限定的です。
ただし、契約途中で解約すると、契約期間連動の保険料割引が無効化されるケースもあるため、契約条件を確認のうえ判断しましょう。
また、家具家電に動産保険をかけていた場合も、あわせて解約手続きを進めることで、無駄な保険料の継続発生を防げます。
保険会社に廃業届のコピー提出を求められることもあるため、控えを保管しておくと手続きがスムーズです。
解約のタイミングを誤ると保険空白期間が生じる可能性もあるため、廃業日と解約日の整合性を慎重に確認しましょう。
廃業届を出さずに放置するリスク

運営をやめた後、廃業届を出さずに放置してしまう運営者も少なくありませんが、これには重大なリスクが伴います。
ここでは、放置による3つの主要リスクを整理して解説します。
事業者としての責任を最後まで果たすことで、将来の機会損失も回避できます。
定期報告の未提出扱いによる行政指導
民泊事業者には、2ヶ月ごとに「住宅宿泊事業の宿泊実績」の定期報告義務があります。
廃業届を出さずに営業をやめてしまうと、定期報告の未提出扱いとなり、自治体から行政指導が入ります。
行政指導は最初は文書による注意喚起ですが、継続的な無視は処分の対象となります。
また、行政指導は記録として残るため、将来別の事業を申請する際にも不利な情報として参照されることがあります。
「もう運営してないから関係ない」という認識は誤りで、廃業届を提出するまで届出事業者としての義務は継続します。
正式な廃業届出は、形だけの手続きではなく、自身の信用を守るための重要な意義を持つ手続きといえます。
後手に回ると行政指導から処分への移行も発生しうるため、早期対応が肝心です。
過料や罰則の対象となる可能性
廃業届の未提出や定期報告の未提出は、住宅宿泊事業法に基づく過料の対象となります。
住宅宿泊事業法では、廃業等の届出義務違反は30万円以下の罰金、定期報告義務違反は20万円以下の過料が規定されています。
金銭的な負担も大きいですが、前科や行政処分歴が残ることで、社会的信用への影響もあります。
また、同一事業者が運営する他の事業や、関連法人の許認可申請にも悪影響を及ぼす可能性があります。
過料・罰則は形式的なものではなく、実際に適用された事例も存在するため、軽視せず期限内に手続きを完了させることが重要です。
わずか1通の届出書を提出するだけで回避できるリスクですので、忘れずに対応しましょう。
罰則は行政処分歴として記録に残るため、将来の事業活動にも長期的な影響を及ぼします。
再開業時の審査で不利になる
将来、民泊や旅館業を再開業する際の審査で、過去の廃業届出未提出が不利に働くことがあります。
民泊新法・旅館業法では、過去の法令違反歴・行政処分歴が新規申請時の審査要素となります。
「廃業届を出さずに放置した履歴」は法令遵守意識の欠如として評価されかねません。
また、M&Aで民泊事業を売却する場合にも、買い手側のデューデリジェンスで問題が発覚し、譲渡価格の減額や契約破談につながる恐れがあります。
事業者としての信用を守るためにも、廃業時の手続きは漏れなく完了させることが、長期的な視点でも極めて重要です。
将来の選択肢を狭めないためにも、面倒でも適切な対応を心がけましょう。
廃業時にしっかりと手続きを完了させることで、再起や新規事業への道も開けやすくなります。
関連ページ:大阪の民泊事業譲渡|相場・マルチプル・売却の注意点
負債を抱えている場合の廃業・清算手続き

負債を抱えた状態での民泊廃業は、通常の廃業より複雑な清算手続きが必要となります。
ここでは、資産超過・債務超過・個人事業主という3つのケース別に、清算手続きの流れを整理して解説します。
状況に応じた適切な手続きを選択することで、債権者との関係を健全に整理できます。
資産超過の場合の通常清算手続き
資産が負債を上回っている(資産超過)法人の場合、通常清算手続きを選択できます。
通常清算では、株主総会の解散決議→清算人選任→債権者保護手続き→残余財産分配→清算結了登記という流れで進行します。
債権者保護手続きとして、官報公告(2ヶ月以上)・知れたる債権者への個別催告が必要となります。
通常清算は債務がすべて弁済可能なケース向けで、清算結了までに最低2〜3ヶ月を要します。
司法書士・税理士・弁護士の関与が一般的で、専門家報酬として30〜100万円程度が必要です。
民泊事業の廃業届と並行して進める必要があるため、計画的なスケジューリングが重要となります。
清算結了登記が完了すれば、法人としての法的存在は完全に終了します。
残余財産が出る場合は、株主への分配と最終的な税務処理も適切に行う必要があります。
債務超過の場合の特別清算と法人破産
債務超過の法人は、特別清算または法人破産の選択肢があります。
特別清算は、株主総会で解散決議した株式会社が、債権者と協議のうえ清算する裁判所の手続きで、債権者の同意が得られる場合に活用できます。
法人破産は、債務超過で支払不能な法人が裁判所に申し立てる手続きで、破産管財人が選任されて資産処分・債権者への配当を実施します。
破産手続きでは、裁判所への予納金(20〜100万円程度)・弁護士費用(50〜200万円程度)が必要となります。
破産が選択された場合、廃業届出義務者は破産管財人となり、行政手続きも管財人主導で進行します。
債務超過案件は専門弁護士への早期相談が、損害最小化の鍵となります。
破産手続きにより、原則として法人の負債は免除されますが、代表者個人の連帯保証責任は別途整理が必要です。
個人事業主の自己破産と任意整理
個人事業主として民泊を運営し、債務超過に陥った場合、自己破産または任意整理を検討する必要があります。
自己破産は、裁判所に申し立てて債務全額を免除してもらう手続きで、生活再建を最優先する場合に有効です。
ただし、信用情報への登録(5〜10年)・一定資産の処分・職業制限(復権まで)などのデメリットがあります。
任意整理は、債権者と交渉して返済条件の緩和(利息カット・分割返済)を行う手続きで、自己破産より影響が軽微です。
個人事業主は、事業の負債と個人の負債が一体となるため、慎重な判断と弁護士との相談が不可欠です。
民泊運営で連帯保証している場合は、保証債務も含めた整理計画が必要となるため、専門家のアドバイスを受けて進めましょう。
また、個人再生という選択肢もあり、住宅ローンを残しながら他の借金を5分の1〜10分の1に減額できる制度として、不動産所有者には有効な手段となります。
廃業する前に検討すべき代替の選択肢

民泊運営の継続が困難な場合でも、廃業以外の代替選択肢を検討する価値があります。
ここでは、業態転換・賃貸切替・物件売却・M&A譲渡という4つの選択肢を整理して解説します。
状況に応じた最適な選択肢を選ぶことで、廃業よりも経済的合理性の高い結果を実現できます。
旅館業法への業態転換で運営を継続する
民泊新法から旅館業法(簡易宿所営業)への業態転換は、180日制限を撤廃して通年運営を可能にする選択肢です。
旅館業法の簡易宿所営業許可を取得すれば、年間365日営業可能となり、収益機会が大きく拡大します。
ただし、フロント設置・トイレ・洗面・浴室などの設備基準が民泊新法より厳しく、用途変更や消防設備工事が必要なケースもあります。
転換コストは数百万円程度ですが、年間営業日数の倍増を考えれば、長期的な投資効果は十分期待できます。
立地と物件規模によっては有力な選択肢となるため、廃業判断前に検討する価値があります。
業態転換のフィージビリティ調査だけでも、自治体や専門家に相談する価値が十分にあります。
賃貸経営やマンスリー賃貸への切り替え
通常の賃貸経営やマンスリー賃貸への切り替えも、有力な代替選択肢です。
賃貸住宅化すれば、稼働率変動リスクなく安定した家賃収入を得られ、運営の手間も大幅に減らせます。
マンスリー賃貸は、民泊向けに整えた家具家電付き内装を活かしやすく、転換コストを抑えながら別収益化が可能です。
また、シェアハウス・コワーキングスペースなどの他用途展開も、立地特性によっては高収益化の道となります。
用途変更に伴う行政手続きや家賃水準の変動を含めて、複数のシナリオで採算性を試算したうえで判断しましょう。
賃貸への切替は、廃業より損失を抑えながら資産を有効活用できる現実的な選択肢です。
立地特性に応じて最適な用途を選ぶことが、収益最大化の鍵となります。
物件売却で資産を現金化する
自己所有物件の場合、不動産売却で資産を現金化する選択肢があります。
近年はインバウンド需要回復で収益不動産価格が上昇傾向にあり、購入時より高値で売却できるケースも増えています。
民泊向けに整備した内装・設備は売却時にゼロ評価となるケースが多いものの、不動産自体の値上がりで初期投資をある程度回収できる可能性があります。
信頼できる不動産仲介会社に複数社相見積もりを取り、最適な売却条件を引き出しましょう。
売却タイミングを見極めることで、想定以上の回収も期待できます。
また、売却益に対する譲渡所得税の試算も事前に行い、手取り額ベースで判断することが重要です。
売却時の市場環境や金利動向も判断材料に含めることで、最適なタイミングを掴めます。
M&Aによる民泊事業譲渡で投資回収する
M&Aによる民泊事業譲渡は、近年最も注目されている代替選択肢です。
稼働中の民泊事業は、物件・許認可・OTA評価・運営ノウハウ・家具家電をまとめて第三者に承継できるため、廃業して資産を捨てるより経済的合理性が高い選択肢となります。
赤字運営の民泊でも、立地が良ければ買い手が見つかるケースは多く、想定以上の譲渡価格で取引が成立することもあります。
2023年12月の旅館業法改正により、事業譲渡でも旅館業の許認可承継が可能となり、M&Aの実務的負担が大幅に軽減されました。
宿泊業特化のM&A仲介会社を活用すれば、相場感のある適正取引が実現しやすく、損失を最小限に抑えながら撤退できる選択肢といえるでしょう。
廃業届を提出する前に、まずM&Aで譲渡できる可能性を探ることが、経営判断として最も賢明な進め方です。
また、M&Aによる譲渡は従業員や取引先との関係も維持できるため、事業者としての評判維持にもつながる選択肢となります。
関連ページ:個人オーナー間で事業ビジョン合致|都内民泊M&A事例
まとめ
民泊廃業は、届出書の提出・契約整理・税務処理・保険解約など、多岐にわたる実務手続きが必要です。
廃業届を放置すると行政指導や過料の対象となるため、運営をやめた場合は速やかに30日以内に届出を完了しましょう。
負債がある場合は通常清算・特別清算・破産・任意整理など状況に応じた手続きを選択し、専門家のサポートを受けて進めることが重要です。
また、廃業の前にM&Aによる事業譲渡や業態転換などの代替選択肢を検討することで、損失を最小化できる可能性があります。
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