民泊の許可種別(旅館業・住宅宿泊事業・特区民泊)とM&A評価への影響

民泊のM&Aでは、対象施設が「どの許可・届出・認定で運営されているか」が、評価にも手続きにも大きく影響します。同じような立地・規模の施設でも、許認可の区分によって営業日数の制約や承継のしやすさが変わるためです。本記事では、旅館業・住宅宿泊事業・特区民泊という3つの区分と、それぞれがM&Aの評価に与える影響を整理します。
民泊に関わる3つの許認可区分
宿泊事業を営む方法には、主に旅館業法に基づく許可(簡易宿所など)、住宅宿泊事業法に基づく届出(いわゆる民泊新法)、そして国家戦略特別区域法に基づく特区民泊の認定があります。それぞれ根拠となる法令や必要な手続き、営業日数の扱いが異なります。M&Aの検討では、まず対象施設がどの区分に該当するかを正確に把握することが出発点になります。
①旅館業(簡易宿所等)
旅館業許可で運営される施設は、営業日数に上限がなく、通年で営業できる点が特徴です。この自由度の高さから、事業としての評価は相対的に高くなりやすい傾向があります。加えて、2023年12月の法改正により、事業譲渡による営業者の地位の承継が承認を通じて可能となり、M&Aの見通しを立てやすくなりました。一方、取得には設備や構造の基準を満たす必要があります。
②住宅宿泊事業(民泊新法)
住宅宿泊事業の届出による民泊は、比較的取り組みやすい一方、年間の営業日数が180日を上限とする制約があります。この日数制限は収益の上限に直結するため、評価においては旅館業と比べて抑えられやすい面があります。また、M&Aの際は、この届出は承継制度の対象とは異なり、廃止届と新規届が必要となる可能性がある点にも注意が必要です。
③特区民泊
特区民泊は、認定を受けた区域で運営される宿泊事業で、営業日数の上限がない点が特徴です。大阪市などが代表的な区域として知られています。営業日数の制約がないため収益性の面で評価されやすい一方、新規認定の受付が終了した区域もあり、既存の認定施設の希少性が高まる可能性があります。認定の承継はスキームや行政の判断によるため、事前の確認が欠かせません。
- 旅館業:営業日数の上限なし、事業譲渡での地位承継が可能に
- 住宅宿泊事業:年間180日の上限あり、廃止届+新規届が必要な場合あり
- 特区民泊:営業日数の上限なし、認定の承継は要確認
許認可区分が評価を左右する理由
許認可区分は、営業日数の制約を通じて収益の上限に影響し、承継のしやすさを通じて取引の確実性に影響します。営業日数に制約がなく、承継の見通しが立てやすい施設ほど、買い手様にとって取得後の運営リスクが小さく、評価につながりやすいといえます。逆に、日数制限や承継手続きの不確実性が大きい場合は、その分を見込んで評価が慎重になることもあります。
よくあるご質問
Q. 区分は途中で変更できますか。 A. 別の区分へ移行するには、新たな許可・届出・認定の手続きが必要となる場合があります。所管行政や行政書士の先生へのご確認をおすすめします。
Q. どの区分が一番高く売れますか。 A. 一概には言えませんが、営業日数の制約が少なく承継しやすい区分は評価されやすい傾向があります。個別の事情によって異なります。
区分の確認が不十分だと生じるリスク
許認可区分の確認が不十分なまま取引を進めると、取得後に思わぬ問題が生じることがあります。たとえば、住宅宿泊事業の施設を、承継制度で引き継げると誤解していた場合、届出のやり直しに時間がかかり、その間の営業に影響が出るおそれがあります。また、区分ごとの営業日数の制約を見落とすと、想定していた収益が得られないこともあります。こうした事態を避けるためにも、区分の確認と、それに応じた手続きの把握は、デューデリジェンスの重要な項目となります。
特に、実際の運営が届け出た区分の範囲内で行われているかも確認しておきたい点です。届出上の日数を超えて営業していた、あるいは必要な手続きを経ずに運営していた、といった事情があると、取得後にリスクを引き継ぐことになりかねません。書類上の区分だけでなく、運営の実態まで含めて確認することが望まれます。
消防・建築の基準も区分ごとに関わる
許認可の区分は、消防法令や建築に関する基準とも関わります。旅館業許可では、用途や規模に応じて消防設備や構造の基準を満たす必要があり、これらの適合状況はM&Aでも重要な確認事項です。基準を満たすための改修が必要な場合、その費用は取得後の負担となります。区分に応じてどのような基準が関わるかを理解しておくことで、取得後の想定外の出費を避けやすくなります。詳細は消防や建築の専門家、所管行政への確認をおすすめします。
まとめ
民泊の許認可区分は、営業日数の制約と承継のしやすさを通じて、M&Aの評価と手続きに大きく影響します。まずは対象施設の区分を正確に把握することが、検討の第一歩です。区分ごとの手続きは所管行政や専門家の先生への確認が欠かせません。株式会社Tabiji Partnersは民泊専門のM&Aとして、許認可を踏まえたご相談に対応しております。あわせて旅館業法改正と許可承継もご覧ください。
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