民泊譲渡の流れを専門家の濱口が徹底解説|相談からクロージングまでの全手順と許認可の違い

民泊専門M&A仲介会社Tabiji Partners代表の濱口です。民泊譲渡を検討し始めると、「実際にはどんな順番で進むのか」「どのタイミングで契約が決まり、いつ引き渡しになるのか」が気になる方は多いです。
実際に仲介をしていると、民泊譲渡は単に買い手様を探して終わりではありません。秘密保持契約、面談、内見、基本合意、DD、事業譲渡契約、そして許認可対応まで、いくつかの工程を順番に進めていく必要があります。
この記事では、私の過去120件の民泊譲渡仲介の経験から、民泊譲渡の標準的な流れを、売り手の方にもわかりやすい形で整理して解説します。あわせて、住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業で最後の工程がどう違うのかもまとめます。
民泊譲渡の流れは「契約」と「許認可対応」で見ると整理しやすい
民泊譲渡の流れは、大きく分けると前半の「買い手様選定と条件調整」と、後半の「契約・引き渡し準備」に分かれます。
特に大事なのは、民泊の譲渡では物件そのものだけではなく、賃貸借契約、家具・備品、外注先、運営ノウハウなどの事業全体をどう引き継ぐかを詰める点です。
そのため、一般的な不動産売買よりも、面談やDDの比重が高くなりやすいです。ここを理解しておくと、途中で「思ったより工程が多い」と慌てずに済みます。
許認可に関しては、こちらの動画で特に詳しくご説明しておりますので、記事と併せてご確認ください。
民泊譲渡の標準的な流れ
ここでは、実務上よくある標準的な流れを10ステップで整理します。
- 秘密保持契約の締結:買い手候補が案件の詳細情報を見る前に、秘密保持契約を締結します。売上や住所、運営内容といった重要情報を守るための最初の工程です。
- 初回面談:売り手と買い手が最初に話す場です。譲渡理由、希望条件、物件の特徴、運営の実態などをすり合わせます。
- 内見:実際の部屋や運営状態を確認します。写真では伝わりにくい動線、清掃状態、設備の劣化状況なども見られるポイントです。
- 買い手アドバイザリー契約:買い手側が仲介会社と正式に動く段階です。ここから情報開示や条件調整が一気に具体化しやすくなります。
- 意向表明書の提出:買い手が「この条件で進めたい」という意思を示す工程です。価格感や引き継ぎ条件のたたき台が見えてきます。
- 基本合意:大枠の条件が一致したら、基本合意を結びます。この段階で独占的に話を進める形になることが多いです。
- DD:DDはデューデリジェンスのことです。売上、契約、運営実態、法務面などを詳しく確認します。ここで資料の整い方が、成約スピードにかなり影響します。
- 事業譲渡契約:最終条件が固まったら、事業譲渡契約を締結します。どこまでを譲渡対象にするか、引き渡し日をいつにするかもここで明確にします。
- 許認可対応:ここが民泊譲渡の特徴です。住宅宿泊事業や特区民泊は再申請が必要で、旅館業は承継手続きの考え方になります。
- クロージング:最終的な決済と引き渡しを行う工程です。鍵、家具備品、マニュアル、清掃業者の引き継ぎなどもこのタイミングに合わせて進めます。
住宅宿泊事業・特区民泊・旅館業で最後の工程だけが大きく違う
譲渡の前半は似ていますが、最後の許認可まわりは形態ごとに違います。
住宅宿泊事業の場合
住宅宿泊事業は、買い手様が新たに届出を取り直す必要があります。今の届出をそのまま承継することはできません。そのため、再申請までの段取りを見込んだスケジュール設計が重要です。
また、都道府県ごと、東京都の各区によって、買主様の住宅宿泊事業の届出が承認されてから、売主様の住宅宿泊事業の届出を廃止するパターンや、買主様の住宅宿泊事業の届出が承認される直前に売主様の住宅宿泊事業の届出を廃止するパターン、買主様の住宅宿泊事業の届出をする前に売主様の住宅宿泊事業の届出を廃止するパターンなどに分かれます。濱口の経験では規則性はなく、区によって様々なので、専門家や行政書士に確認されるのがよいかと思います。
特区民泊の場合
特区民泊も、基本的には買い手様側で認定を再取得する流れになります。特区ごとに行政対応の実務が少し異なるため、早めに確認しておくとスムーズです。こちらも住宅宿泊事業と同じくいくつかのパターンに分かれる為、要確認です。
旅館業の場合
旅館業は、事前手続きを踏むことで承継が可能です。この点が住宅宿泊事業や特区民泊との大きな違いで、買い手様にとっても魅力になりやすいです。
ただし、旅館業の事業譲渡では、実際に事業を譲渡する前に、管轄保健所から営業者の地位の承継承認を受ける必要があります。そのため、事業譲渡契約書や譲渡証明書に記載する「譲渡日(効力発生日)」は、原則として承継承認日より後の日付に設定しなければなりません。
承認前の日付で譲渡の効力が発生すると、承継制度を利用できず、買主様が旅館業の新規許可を取得し直さなければならない可能性があります。契約自体を承認前に締結する場合は、「保健所による承継承認を停止条件として譲渡の効力が発生する」旨を定めるなど、承認前に事業譲渡が完了しない契約設計が重要です。なお、自治体によって必要書類や運用が異なるため、契約締結前に管轄保健所へ譲渡予定日と手続の流れを確認することをおすすめします。厚生労働省および各自治体も、事業譲渡の効力発生前に承認を受ける必要があると案内しています。
つまり、民泊譲渡の流れを考えるときは「契約フローはほぼ共通、最後の許認可だけ違う」と押さえると理解しやすいです。
濱口の意見として、実務上はこのあたりの作業は行政書士に依頼するのが安全かと思います。
ちなみに、旅館業の承継の場合、既存の許可に対して規制が遡及して適用されることは、原則としてないものと考えられます。この点については、以下の動画で解説しています。
民泊譲渡の流れで売り手様が準備しておきたいもの
流れをスムーズに進めるために、売り手は次のものを早めに揃えておくのがおすすめです。
- 売上や宿泊者情報が整理された、OTAから出力できる収益資料(簡単にOTAから出力できます)
- 賃貸借契約書
- 許認可関連の資料
- 家具、備品の一覧
- 清掃業者や運営代行など外注先の情報(販管費情報)
- 運営マニュアル
このあたりが整理されていると、初回面談からDDまでの流れが早くなります。逆に、資料が曖昧だと買い手様が不安になり、話が止まりやすくなります。
民泊譲渡で契約前に確認したい5つの注意点
民泊事業をスムーズに売却し、トラブルを防ぐためには以下の5つのポイントに注意する必要があります。
1. 賃貸借契約の引き継ぎ(名義変更)が可能か
事業を引き継ぐ際、最も大きなハードルになりやすいのが賃貸借契約の引き継ぎです。
転貸(サブリース)で民泊を運営している場合、事業を引き継ぐためには家主(オーナー)や管理会社の承諾を得て、賃貸借契約の借主名義を買主に変更する必要があります。
- 家主の承諾が必須:無断で名義を変更することは契約違反となります。
- 再審査の可能性:買主の属性によっては、家主の審査が通らないケースもあります。
- 契約変更の手数料:名義変更手数料や新たな保証会社の費用が発生することが多いです。
売却を本格的に進める前に、まずは現在の管理会社や家主に「事業譲渡に伴う名義変更が可能か」を打診しておくことが重要です。
2. 許認可は原則「再申請」が必要になる
民泊の運営形態によって、許認可の引き継ぎ可否が異なります。ここを誤解していると、買主との間で大きなトラブルになる可能性があります。
- 住宅宿泊事業(新法民泊):引き継ぎ不可。買主にて新規で届出のやり直しが必要です。
- 特区民泊(国家戦略特区):引き継ぎ不可。買主にて新規で認定の取り直しが必要です。
- 旅館業(簡易宿所):事前に承認を受けることで承継が可能です。
民泊(新法・特区)の場合は、譲渡手続きの途中で一度営業を停止し、買主名義での許可が下りるまで待機する期間(ダウンタイム)が発生することが一般的です。このダウンタイムの家賃負担をどちらが持つかなどの調整も必要になります。ただし、上述した様に自治体によってはダウンタイムがほぼないこともよくあります。
3. Airbnbのリスティング(アカウント)は譲渡不可
OTA(オンライン旅行予約サイト)の実績は、買主にとって大きな魅力ですが、取り扱いには注意が必要です。
- Airbnbの規約:Airbnbでは、アカウントやリスティング(物件ページ)、スーパーホストのバッジ、過去のレビューを第三者に譲渡することは規約で禁止されています。
- その他のOTA:Booking.comなど、一部のOTAでは実績の引き継ぎが可能なケースもあります。
実際のBooking.comでのリスティング譲渡の進め方については、以下の動画で解説しています。
そのため、Airbnb経由の集客実績がメインの場合、「レビュー実績をそのまま引き継げます」といった安易な約束はしないように注意してください。アカウントの再作成が必要になる前提で交渉を進めるのが安全です。
4. 外注先(清掃業者や運営代行)の引き継ぎ調整
民泊の運営をスムーズに引き継ぐためには、現場を支える外注先の継続利用が鍵となります。
- 清掃業者:現在の清掃業者が、買主に変わっても引き続き清掃に入ってくれるか確認が必要です。
- 運営代行会社:メッセージ対応などを外注している場合、代行会社との契約を引き継げるか、あるいは買主自身で新たに手配するかの取り決めが必要です。
優れた清掃業者や運用スタッフの引き継ぎは、買主にとって「翌日からすぐに運営できる」という大きなメリットとなり、事業価値(売却価格)を高める要因にもなります。
5. 売却(譲渡)のタイミングと相場感
民泊事業の売却価格(マルチプル)は、一般的に「年間利益の2.0〜3.5倍」となるケースが多いです。
より良い条件で売却するためには、タイミングが重要です。
- 利益が出ている時:稼働率が高く、しっかりとした利益実績が出ているタイミングが最も高く売れやすいです。
- 閑散期の直前は避ける:買主は今後の収益性を気にするため、繁忙期前や繁忙期中の売却が有利です。
- 余裕を持ったスケジュール:買い手探しから契約、実際の引き渡しまでには通常2〜4ヶ月程度かかります。退去期限ギリギリになって慌てて売却しようとすると、足元を見られて価格が下がってしまうケースがあります。
民泊の「売却」と「事業譲渡」はどう違う?
民泊の売却をご検討の売り手様から、「売却」と「事業譲渡」はどう違うのかというご質問をいただくことがあります。日常的にはほぼ同じ意味で使われていますが、実務上は次のように整理すると分かりやすいかと思います。
- 売却:民泊事業を手放すこと全般を指す一般的な表現
- 事業譲渡:民泊事業の設備・契約上の地位・営業権などを、個別に買い手様へ引き継ぐ契約形態
- 株式譲渡:民泊事業を営む法人の株式そのものを買い手様へ譲り渡す形態(法人ごとの承継)
賃貸物件で運営されている場合は、物件の所有権の売買ではなく、賃貸借契約上の地位や設備・営業権を引き継ぐ事業譲渡の形が中心となります。どの形態が適しているかは、運営形態、許認可の種別、契約内容、税務上の取扱いなどによって異なりますので、税理士や弁護士など専門家へのご確認とあわせてご検討いただくことをおすすめします。
民泊の売却を決める前に整理しておきたいこと
売却のご相談をいただく際に、次の情報を整理しておいていただくと、進め方や条件のご提案がスムーズになります。すべてが揃っていない段階でもご相談いただけます。
- 売却を検討される理由と、ご希望の時期
- 賃貸借契約の残存期間と、転貸・譲渡に関する条項の有無
- 大家様(賃貸人様)へのご相談状況と、ご承諾を得られる見込み
- 許認可の種別(住宅宿泊事業の届出、特区民泊、旅館業許可など)
- 直近12か月程度の売上、稼働率、経費の実績
- 清掃・運営体制、管理会社様や外注先との契約内容
- OTAアカウントやリスティングの登録状況
- 譲渡の対象に含める資産と、対象外とする資産の区分
特に賃貸借契約と許認可の取扱いは、売却の可否や進め方に影響しやすい項目です。所管行政や賃貸人様へのご確認が必要となる場合がございますので、早めに状況を把握しておくと、その後の調整を進めやすくなります。
民泊譲渡をスムーズに進めるなら専門仲介に早めに相談したい
民泊譲渡は、価格だけで決まる話ではありません。買い手との相性、家主承諾、許認可対応、引き継ぎ実務まで含めて調整する必要があります。
実際に仲介をしていると、売りたいと思ってから相談するまでのタイミングが早い案件ほど、条件を整えて進めやすい傾向があります。まだ売るか迷っている段階でも、まずは流れを把握しておくことが大切です。
他にも実務上は、AirbnbをはじめとしたOTAの承継はどうするのか、など、Airbnb Partners登録企業として数多くの案件に携わってきた濱口にご相談いただければ、簡易査定からクロージングまで完全成果報酬制で対応させていただきます。
価格の目安を先に把握したい場合は民泊の売却相場・査定価格の記事もあわせてご覧ください。
まとめ|民泊譲渡は「前半の交渉」と「最後の許認可対応」で考えるとわかりやすい
本記事は、民泊譲渡の仲介実績120件を持つ専門家・Tabiji Partners代表の濱口が、相談から許認可対応・クロージングまでの流れを実務目線で解説したものです。
民泊譲渡の流れは、秘密保持契約から始まり、面談、内見、意向表明、基本合意、DD、事業譲渡契約、許認可対応、クロージングへと進みます。
特に重要なのは、住宅宿泊事業や特区民泊では再申請が必要で、旅館業では承継の考え方になることです。この違いを早い段階で理解しておくと、譲渡の見通しが立てやすくなります。
民泊投資や民泊運営を検討している方は、
新規開業だけでなく、既存事業の譲り受けも一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
民泊専門M&A仲介 Tabiji Partnersに相談する
本記事の監修
株式会社Tabiji Partners代表取締役
濱口優太郎
東京都の旅館業民泊・住宅宿泊事業を中心に、東京都の各種民泊事業譲渡プロジェクトのメインアドバイザーとして、民泊・旅館業M&Aを成約に導く。個人での仲介実績は30件超
民泊の譲渡・売却を具体的にご検討の際は、民泊の売却・無料査定のページ、または民泊専門のM&A仲介を行うTabiji Partnersのトップページもご参照ください。
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