旅館・ホテルの改装・リニューアルと売却|売却前に改装すべきか、価格・届出への影響

旅館・ホテルの売却を考え始めたとき、「売却前に改装しておいた方がよいのか」「改装したばかりの施設は評価されるのか」というご相談をいただくことがあります。改装は施設の魅力を高める一方で、費用・期間・手続きがかかり、買主様の計画と合わない場合もあります。
本記事では、売却前に改装するかどうかの考え方、買主様の投資計画と価格への影響、改装時に確認したい届出や手続き(2026年9月29日確認)を整理します。個別の判断は、建築士・行政書士・税理士などの専門家や、所管の行政窓口へのご確認をお願いいたします。
売却前に改装すべきか:判断の考え方
一律の正解はありません。施設の状態と、想定される買主様の計画によって判断が変わります。
| 売却前に改装する | 現状のまま売却し、買主様が改装する | |
|---|---|---|
| 考えられる利点 | 営業継続に必要な修繕を済ませておくことで、買主様の不安が小さくなる可能性がある | 売主様の費用負担が抑えられる。買主様が自らのコンセプトで改装を計画できる |
| 注意点 | 改装費用を価格にそのまま上乗せできるとは限らない。工事期間中は休業・減収となる場合がある | 修繕が必要な箇所は、価格や条件の協議で考慮される可能性がある |
| 向いている場面 | 雨漏り・設備の故障など、営業の継続に支障がある修繕 | 内装のデザインや客室の構成など、買主様の方針で変わりやすい改装 |
判断に迷う場合は、改装に着手する前に、想定される買主様像や、改装の有無で条件がどう変わり得るかを整理しておくことをおすすめいたします。
買主様の投資計画と価格への影響
買主様は、取得の対価だけでなく、取得後に必要な修繕・改装の費用、工事中の休業期間、再開後の収益の見込みを合わせて、投資全体として判断することが一般的です。そのため、次のような情報がそろっていると、買主様が見積りを立てやすくなります。
- 建物・設備ごとの修繕履歴と、更新時期の目安
- 直近の改装の内容・費用・時期と、改装前後の稼働率・客室単価の推移
- 建物の図面、検査済証など、建築時・改装時の手続きの記録
- 消防用設備の点検記録
改装がどの程度価格に反映されるかは、施設ごと・買主様ごとに異なります。改装後の実績が短い場合は、効果を示す資料が限られる点にもご留意ください。
改装時に確認したい届出・手続き
旅館業の構造設備の変更
旅館業の許可申請書に記載した事項(施設の構造設備の概要など)に変更があったときは、10日以内に届け出る必要があります(旅館業法施行規則第4条)。客室数や浴室などが変わる改装では、工事の前に所管の保健所等へ相談しておくと安心です。
用途変更の確認申請(200㎡超)
事務所や住宅など他の用途の建物をホテル・旅館として使う場合、用途変更する部分の床面積が200㎡を超えるときは、建築基準法に基づく確認申請が必要です。2019年6月25日施行の改正で、200㎡以下の用途変更は確認申請が不要となりましたが、国土交通省は、手続きが不要な場合でも建築基準法や消防法等への適合は引き続き求められるとしています(国土交通省リーフレット「建築基準法改正により小規模な建築物の用途変更の手続きが不要となりました」)。
大規模な建築物の耐震
ホテル・旅館で階数3以上かつ床面積の合計5,000㎡以上の建築物は、耐震改修促進法により要緊急安全確認大規模建築物として耐震診断が義務付けられ、所管行政庁が結果を公表しています(国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律の概要」)。該当する施設では、改装にあわせて耐震改修の予定を整理しておくことが、買主様の判断材料になります。
消防・地域のルール
間取りや内装の変更によって、消防用設備等の基準や届出が関わる場合があります。工事の前に所轄の消防署へ相談することをおすすめいたします。また、地域によっては外観や看板の変更に独自のルールがあります。京都市の景観のルールは京都の旅館・ホテルの売却・事業承継、箱根の国立公園内での許可は箱根の旅館・ホテル、経営改善を続けるか承継・売却するかの記事で紹介しています。
改装中・改装直後に売却する場合の注意点
- 工事請負契約や保証書を買主様に引き継げるか、残工事の費用をどちらが負担するか
- 休業期間中の予約の受付状況と、再開後の予約の取扱い
- 補助金を活用した改装では、取得した財産の処分に制限や承認が必要となる場合があるため、交付元の要綱を確認すること
- 改装に伴う借入の返済と、担保・経営者保証の取扱い
ご相談について
株式会社Tabiji Partnersは、宿泊事業のM&A仲介として、売却・事業承継のご相談を承っております。改装を行うかどうかを決める前の段階でも、想定される買主様像や進め方の整理についてご相談いただけます。工事の設計・施工や、不動産の売買仲介は行っておりません。
株式会社Tabiji Partnersのホテル・旅館領域での支援実績は、ホテル・旅館の支援実績のページで、成約(カプセルホテル1件・無人ホテル2件・地方旅館1件)、M&A戦略構築(静岡県等の旅館4件)、経営コンサルティング(3件。現在は新規募集を停止しております)に分けてご紹介しています。なお、当社は不動産の売買仲介は行っておりません。
関連ページ
本記事で参照した公的資料(2026年9月29日確認)
- 旅館業法施行規則(e-Gov法令検索)第4条
- 国土交通省「建築基準法改正により小規模な建築物の用途変更の手続きが不要となりました」(2019年6月25日施行)
- 国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律の概要」
民泊・宿泊施設の譲渡をご検討ですか?
Tabiji Partnersは日本唯一の民泊M&A専門仲介会社です。Airbnbスーパーホスト経験のあるアドバイザーが、平均3ヶ月での成約を実現。完全成功報酬制、ご相談は無料です。