箱根の旅館・ホテル、経営改善を続けるか承継・売却するか|入湯税・国立公園・温泉利用許可の確認事項

箱根で旅館・ホテルを営む経営者様のなかには、客室や浴場の改装、人員の確保、料金の見直しといった経営改善を続けるか、後継者への承継や第三者への売却に進むかで迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
箱根の宿泊施設は、温泉の利用や国立公園内の立地など、他の地域と比べて確認すべき手続きが多くなる傾向があります。本記事では、箱根町・環境省・法令で確認できた制度(2026年9月29日確認)をもとに、判断の視点を整理します。売却・買収の具体的な進め方は、箱根の旅館・ホテルM&Aの記事で解説しています。
経営を続ける場合と、承継・売却する場合で何が変わるか
| 観点 | 経営を続ける場合 | 承継・売却する場合 |
|---|---|---|
| 温泉 | 現在の利用許可・引湯の契約のまま運営を続ける | 利用許可の承継または新たな許可、引湯・分湯契約の名義変更の可否を確認する |
| 改装・外装 | 国立公園内では、内容により許可・届出を経て実施する | 買主様・後継者の改装計画に、許可の期間を織り込む必要がある |
| 入湯税 | 特別徴収義務者として徴収・納入を続ける | 経営者が変わる場合の手続きを箱根町に確認する |
| 人員体制 | 現在の体制を維持・確保する | 雇用の引継ぎの見込みと条件を整理する |
| 借入・経営者保証 | 現経営者様の保証が続く | 返済・保証の取扱いを金融機関と協議する |
箱根で経営を続ける場合に確認したい負担
入湯税の徴収・納入
箱根町の入湯税は、宿泊客が1人1泊150円、日帰り客が1人50円です。納税義務者は入湯客で、温泉・鉱泉浴場の経営者等のうち町が指定する特別徴収義務者が、利用料金とあわせて徴収し町に納入します。12歳未満の方などは課税免除の対象です(箱根町「入湯税」2026年3月30日更新)。
日帰り入浴を行っているかどうか、課税免除の対象者をどう管理しているかによって事務の内容が変わります。徴収・納入の記録を整えておくことは、経営を続ける場合にも、将来売却する場合にも役立ちます。
国立公園内での改装・外装の変更
箱根地域は富士箱根伊豆国立公園の一部です。環境省の手引きによると、特別地域では工作物の新築・改築・増築、屋根や壁面の色彩の変更、広告物の設置などに許可が必要です(自然公園法第20条。特別保護地区は第21条)。普通地域では一定の行為に届出が必要です(同法第33条)。標準処理期間は申請書類の受付から約1か月(大規模な行為は約2か月)とされています(環境省 関東地方環境事務所 富士箱根伊豆国立公園管理事務所「富士箱根伊豆国立公園箱根地域における自然公園法許可申請等の手引き」2024年5月)。
外装の塗り替えや看板の変更も対象になる場合があるため、改装を続ける場合は、施設の所在地がどの地域区分に当たるかと、許可に要する期間を事前に確認しておくことが大切です。
温泉の利用許可と、引き継ぐ場合の扱い
温泉を公共の浴用・飲用に供するには、温泉法第15条により都道府県知事の許可が必要です。許可を受けた者の地位の承継について、同法は法人の合併・分割(第16条。知事の承認が必要)と相続(第17条。被相続人の死亡後60日以内に知事へ承認を申請)を定めています。
事業譲渡の場合に利用許可がどのように扱われるかは、同法の上記の規定の対象とされていないため、譲受人による新たな許可申請が必要になる可能性がございます。スキームを検討する段階で、神奈川県の担当窓口に確認することをおすすめいたします。あわせて、源泉所有者との引湯・分湯の契約についても、名義変更や再契約の条件を確認しておくと安心です。
承継・売却を考え始める目安
- 後継者の候補が決まっていない、または候補者の意向が確認できていない
- 浴場・配管・客室などで、数年以内に大規模な修繕が必要になる見込みがある
- 国立公園内の改装の許可期間を含めると、改善の実施に時間がかかる
- 人員の確保に不安がある
- 借入の返済や経営者保証を、どなたが引き継ぐかが決まっていない
こうした状況が重なる場合は、経営改善と並行して、承継・売却の選択肢も整理しておくことをおすすめいたします。
判断材料として準備しておきたい資料
- 直近3期程度の決算書と、月次の売上・稼働率・客室単価(宿泊・日帰りの区分)
- 旅館業の許可証、温泉の利用許可に関する書類
- 源泉・引湯・分湯に関する契約書と、温泉の成分分析書
- 入湯税の徴収・納入の記録
- 国立公園内での過去の許可・届出の記録と、施設の図面
- 土地・建物の登記事項、または賃貸借契約書
- 修繕履歴、従業員の雇用条件、主な取引先との契約
相談先について
地域の公的な相談窓口として、国が設置し独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」が全国47都道府県にあり、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の相談を無料・秘密厳守で受け付けています(中小機構「事業承継・引継ぎポータル」)。
温泉の利用許可は神奈川県に、国立公園内の行為は富士箱根伊豆国立公園管理事務所に、入湯税は箱根町に、税務は税理士に、それぞれご確認ください。
株式会社Tabiji Partnersは、宿泊事業のM&A仲介として、売却・事業承継のご相談を承っております。なお、旅館の経営コンサルティングは現在新規のご依頼を承っておりません。本記事は、経営を続けるか承継・売却するかを判断するための情報として整理したものです。
株式会社Tabiji Partnersのホテル・旅館領域での支援実績は、ホテル・旅館の支援実績のページで、成約(カプセルホテル1件・無人ホテル2件・地方旅館1件)、M&A戦略構築(静岡県等の旅館4件)、経営コンサルティング(3件。現在は新規募集を停止しております)に分けてご紹介しています。なお、当社は不動産の売買仲介は行っておりません。
関連ページ
本記事で参照した公的資料(2026年9月29日確認)
- 箱根町「入湯税」(2026年3月30日更新)
- 環境省「富士箱根伊豆国立公園箱根地域における自然公園法許可申請等の手引き」(2024年5月)
- 温泉法(e-Gov法令検索)第15条・第16条・第17条
- 中小機構「事業承継・引継ぎポータル」事業承継・引継ぎ支援センター
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