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民泊と旅館業、譲渡するならどちらが有利?M&Aの観点から比較解説

民泊と旅館業、譲渡するならどちらが有利?M&Aの観点から比較解説

「将来的に事業を売却することも見据えて、民泊と簡易宿所どちらで始めるべきか迷っている」
「今運営している民泊(または旅館)は、M&A市場でどれくらい評価されるのだろう?」

宿泊事業に参入する際、あるいは出口戦略(エグジット)を考える際、このような疑問を持つ経営者の方は少なくありません。
宿泊事業は大きく「民泊(新法・特区)」と「旅館業(簡易宿所など)」に分かれますが、実は事業譲渡(M&A)の進めやすさや買い手様からの評価において、両者には明確な違いがあります。

この記事では、宿泊事業に特化したM&A仲介の専門家が、「M&Aによる譲渡」という観点から民泊と旅館業を比較・解説します。


比較1:許認可の「引き継ぎ(承継)」のしやすさ

M&Aにおいて最も大きな違いとなるのが、許認可の取り扱いです。

旅館業(簡易宿所など)は承認を受けて承継できる制度がある

2023年12月13日施行の改正旅館業法により、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業は、譲渡の前に都道府県知事等の承認を受けたときに、買い手様が営業者の地位を承継できる制度が設けられました。
これにより、許可の取り直しによる営業の空白を避けられる可能性があり、運営体制を移行しやすくなりました。ただし、承認の可否や審査期間は自治体の判断によるため、譲渡日の設定には余裕が必要です。

民泊(住宅宿泊事業・特区民泊)は再申請が必要

一方、住宅宿泊事業(民泊新法)は、事業者が変わる場合は買い手様が新たに届出を行う扱いが一般的です。特区民泊も認定は事業者に対して行われるため、運営者が変わる場合は新たな認定が必要と考えられます(大阪市は2026年5月29日で新規受付を終了しています)。
そのため、買い手様の届出・認定の手続きと、売り手様の廃止の手続きの時期をそろえる必要があります。手続きの期間中(ダウンタイム)は営業できない場合があり、家賃だけが発生してしまうため、M&Aの交渉において「ダウンタイム中の家賃負担をどちらがどう持つか」といった調整が必要になります。

➡ 許認可の引継ぎやすさでは、旅館業のほうが進めやすい傾向があります


比較2:事業の売却相場・マルチプル

続いて、企業価値評価(いくらで売れるか)の違いです。

基本的な相場は「年間利益の2.0〜3.5倍」

民泊・旅館業ともに、実質的な年間利益の2〜3.5倍程度で検討されるケースが見られます。当社がこれまでに仲介した成約データ(115件)では、倍率の中央値は旅館業がおおむね3.0倍前後、住宅宿泊事業と特区民泊がおおむね2.5倍前後でした。立地や契約形態、稼働の安定性によって大きく変わるため、目安としてお考えください。
事業が稼ぎ出す「実質的な利益(EBITDA)」をベースに評価されるという根幹の考え方は共通しています。

旅館業の方が高評価を受けやすい理由

ただし、同じ利益額であっても、実務上は「旅館業」の方が、相場の上振れを狙いやすい傾向にあります。その理由は以下の通りです。

  1. 営業日数の制限がない:新法民泊(年間180日制限)のような制約がないため、買い手様から見て将来の収益予測が立てやすい。
  2. 参入障壁の高さ:旅館業許可は民泊に比べて取得(用途変更や消防整備など)のハードルが高いため、「すでに許可が下りている状態」そのものに高い価値が認められます。

➡ 結論:基本相場は同じだが、安定性・参入障壁の観点から「旅館業」の方が評価を高めやすい


比較3:買い手様の層と「譲渡のしやすさ」

案件が市場に出た際の「買い手様の付きやすさ」にも違いがあります。

民泊の買い手様は「個人投資家・新規参入層」が多い

民泊の事業譲渡の魅力は、小規模な物件が多く投資額が比較的小さく済む点です。
そのため、「これから副業で始めたい会社員」や「個人投資家」からのニーズが非常に高く、買い手様候補を広く集めやすい(マッチングしやすい)という特徴があります。

旅館業の買い手様は「法人・同業他社」が多い

旅館業の案件は、規模が大きく投資額も数千万円〜数億円単位になることが多いため、主な買い手様は「事業拡大を狙う宿泊事業者」や「異業種からの参入を狙う法人」になります。
買い手様の母数自体は民泊に比べて少なくなりますが、資金力のある法人が相手となるため、条件の良い物件では、評価が高くなる可能性があります。

➡ 結論:民泊は「買い手様が見つかりやすい」、旅館業は「法人相手に高く売れやすい」


比較表:民泊と旅館業の譲渡のしやすさ

項目住宅宿泊事業(民泊新法)特区民泊旅館業(簡易宿所など)
事業譲渡での許可・届出買い手様が新たに届出運営者が変わる場合は新たな認定が必要と考えられる譲渡前の承認で営業者の地位を承継できる制度あり
営業日数年間180日まで制限なし(最低滞在日数あり)制限なし
倍率の中央値(当社115件)おおむね2.5倍前後おおむね2.5倍前後おおむね3.0倍前後
主な買い手様個人・副業の方が多い個人・法人法人・同業の方が多い

※倍率は当社の成約データにもとづく参考値で、個別の案件の価格を示すものではありません。

よくある質問

Q. 民泊新法で運営中の施設は、旅館業に切り替えてから売却したほうがよいですか?

A. 旅館業の許可を取れれば、営業日数の制限がなくなり評価が上がる可能性があります。一方で、用途地域・建物の構造・消防設備の条件を満たす必要があり、改修費用や期間もかかります。切替えの費用と売却時の評価の差を比べて判断することが大切です。

Q. 株式譲渡(法人ごとの譲渡)なら、許可や届出はそのまま使えますか?

A. 許可や届出を持つ法人そのものを譲渡する場合、営業者は変わらないため、新たな許可・届出が不要となる場合があります。ただし、役員変更などの届出が必要になることや、法人の債務・契約もあわせて引き継ぐことになる点に注意が必要です。具体的な取扱いは所管の行政や専門家にご確認ください。

まとめ

M&A(事業譲渡)の観点から、民泊と旅館業の違いを比較しました。

  • 許認可:旅館業は承認を受けて承継できる制度がある。民泊は買い手様が新たに届出・認定を受けるのが一般的。
  • 相場:どちらも実質的な年間利益の2〜3.5倍程度で検討されることが多く、当社データでは旅館業の中央値がやや高い(おおむね3.0倍前後)。
  • 買い手様:民泊は個人向けの需要が高く、旅館業は法人向けの需要が高い。

出口戦略(エグジット)まで見据えた上で宿泊事業を展開する場合、初期投資(用途変更手続きや消防設備費用など)をかけてでも「旅館業」の許可を取得しておくことは、将来の売却時に、評価や買い手様の幅の面で有利に働く可能性があります。ただし、用途地域や建物の条件によっては旅館業の許可を取得できない場合もあるため、事前の確認が必要です。

参照した情報

  • 厚生労働省 リーフレット「生活衛生関係営業等の営業者の皆さまへ 事業譲渡に関する手続が整備されます」(2023年12月13日施行)
  • 大阪市 報道発表資料「特区民泊の新規受付終了について」(2025年11月28日発表)
  • 株式会社Tabiji Partners 成約データ(115件、2026年時点)

※2026年11月4日時点で確認した内容です。

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本記事の監修

株式会社Tabiji Partners代表取締役
濱口優太郎

東京都の旅館業民泊・住宅宿泊事業を中心に、東京都の各種民泊事業譲渡プロジェクトのメインアドバイザーとして、民泊・旅館業M&Aを成約に導く。個人での仲介実績は30件超

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