京都の旅館・ホテルの売却・事業承継|宿泊税・旅館業条例・京町家の確認事項

京都市で旅館・ホテルを営む経営者様が売却や事業承継を考える際には、収益や建物の状態に加えて、京都市独自の税・条例・景観のルールを買主様にどう説明するかが論点になります。同じ規模の施設でも、町家かどうか、玄関帳場をどこに置いているか、どの料金帯で販売しているかによって、買主様が確認する事項は変わります。
本記事では、京都市の公的資料で確認できた制度を中心に、売主様が準備しておきたい事項と進め方を整理します。制度の内容は2026年9月29日時点で各ページを確認したものです。個別の取扱いは、所管の窓口や専門家へのご確認をお願いいたします。
京都の旅館・ホテルを売却・承継する前に整理したいこと
最初に、施設の前提を整理しておくと、その後の確認がスムーズになります。
- 旅館業の営業種別(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業)と、許可を受けている営業者(個人か法人か)
- 土地・建物を所有しているか、賃借しているか(賃借の場合は貸主様の承諾の要否)
- 建物が京町家に当たるか、京町家条例の指定を受けているか
- 玄関帳場(フロント)の設置場所と、従業者の駐在体制
- 主な販売チャネル(OTA・自社サイト・旅行会社)と料金帯
営業者が個人か法人かによって、事業譲渡・株式譲渡など取り得るスキームが変わり、旅館業許可の取扱いも変わります。
京都市特有の制度と、売却時に確認したい事項
宿泊税の改定(2026年3月1日から)
京都市の宿泊税は、2026年3月1日から税率が見直されました。宿泊料金(1人1泊。食事代や消費税等を除いた素泊まり料金)に応じて、次のとおりです。
| 宿泊料金(1人1泊) | 2026年2月28日まで | 2026年3月1日から |
|---|---|---|
| 6,000円未満 | 200円 | 200円 |
| 6,000円以上20,000円未満 | 200円 | 400円 |
| 20,000円以上50,000円未満 | 500円 | 1,000円 |
| 50,000円以上100,000円未満 | 1,000円 | 4,000円 |
| 100,000円以上 | 1,000円 | 10,000円 |
出典:京都市「令和8年3月1日からの宿泊税の見直しが正式決定」(2025年10月3日更新)。改定前の区分は同ページの比較表によります。
売却時には、改定後の料金表示・徴収・申告が適切に行われているか、改定前後で稼働率や客室単価に変化があったかを、買主様から確認される可能性があります。改定をまたぐ月次の実績を区分して示せるよう準備しておくと、説明がしやすくなります。
旅館業の駐在規定と玄関帳場
京都市は条例で、旅館業施設における使用人等の駐在を定めています。京都市「宿泊施設に係る不動産取引における留意事項について」(2020年4月1日更新)では、玄関帳場を施設内に置く場合は施設内での駐在、施設外玄関帳場を活用する小規模施設や玄関帳場の特例を受ける京町家では、おおむね800m以内(10分程度で駆け付けられる範囲)での駐在が求められる旨が案内されています。
買主様にとっては、この体制を引き継げるか、自社で人員を確保できるかが運営計画の前提になります。売主様は、現在の駐在場所・人員・シフトを整理しておくことが大切です。
また、簡易宿所営業の施設については、営業者または管理者が条例の適用状況を京都市に照会し、文書で回答を受けられる制度があります(京都市「旅館業(簡易宿所営業)施設における条例適用状況に関する照会制度について」2022年7月1日更新。窓口への持参が必要)。回答書は、買主様への説明資料の一つとして活用できる可能性があります。
営業者が変わる場合の許可の取扱い
上記の京都市のページ(2020年4月1日更新)には、営業者が変わる場合は原則として新たに許可を取得し直す旨が記載されています。その後、改正旅館業法により、2023年12月13日から、事業譲渡の場合も合併・分割・相続と同様に、承認を受けて営業者の地位を承継できる仕組みが設けられました(厚生労働省「旅館業法改正」案内資料)。承認の申請は譲渡の前に、譲渡人と譲受人が共同で行うことが想定されています。
京都市内の施設でどの手続きが必要になるかは、スキームや施設の状況によって異なる可能性がございます。売却の検討段階で、京都市の担当窓口へ事前に確認することをおすすめいたします。
京町家条例と解体の届出
京都市京町家の保全及び継承に関する条例では、京町家を解体する場合の届出が定められています。京都市の案内(「京町家を未来へ」解体工事業者の方へ)によると、個別指定や地区指定を受けた京町家は解体に着手する日の1年前までに届出が必要で、それ以外の京町家も解体前の届出が求められています。
建替えや大規模な改修を前提に取得を検討する買主様にとっては、事業計画のスケジュールに影響する事項です。町家の宿を売却する場合は、指定の有無を事前に確認しておくと安心です。
新景観政策と改装・看板の変更
京都市は2007年9月1日から、建物の高さとデザイン、屋外広告物の規制などを全市的に見直した「新景観政策」を実施しています(京都市「新景観政策」2026年9月11日更新)。買主様が外観の改装や看板の変更を予定する場合は、地域ごとの基準に適合するかの確認が必要になります。
価格を検討する際の確認項目
価格は、収益・資産・契約・運営体制を総合して、買主様との協議のなかで決まります。一律の倍率で決まるものではなく、次のような項目が確認の対象になります。
- 売上・営業利益・EBITDAなどの収益と、その内訳(宿泊・料飲・その他)
- 稼働率・ADR・RevPARと、季節や行事による変動
- 宿泊税改定の前後での実績の変化
- 建物・設備の状態、修繕履歴、今後の設備投資の見込み
- 土地・建物を含むか、賃貸借契約の条件と残存期間
- 駐在体制・従業員の雇用条件と、引継ぎの見込み
- OTAアカウント・予約済みの宿泊予約・取引先契約の取扱い
京都の旅館・ホテルの売却・承継の進め方
- ご相談・秘密保持契約の締結
- 施設・収益・契約の資料整理と、京都市の制度に関する確認事項の洗い出し
- アドバイザリー契約と、想定される買主様像の整理
- 買主様候補への匿名での打診と、関心のある買主様との面談
- 条件交渉・基本合意
- 買主様によるデューデリジェンス(許可・税・条例・契約・建物の確認)
- 最終契約・所管行政への手続き・クロージング
許認可・税務・労務の判断が必要な事項は、行政書士・税理士・社会保険労務士などの専門家や、所管の行政窓口へのご確認を前提に進めます。
よくある質問
町家の宿でも売却を検討できますか。
町家の宿を活用したいと考える買主様もいらっしゃいます。ただし、京町家条例の指定の有無、玄関帳場の特例、駐在体制、改修の制約などによって、買主様が想定する運営や投資の内容が変わります。これらを整理したうえで検討することをおすすめいたします。
簡易宿所でも相談できますか。
簡易宿所営業の施設についてもご相談を承っております。営業者の変更に伴う許可の取扱いや条例の適用状況は施設ごとに異なるため、京都市への確認を前提に進め方を検討します。
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株式会社Tabiji Partnersのホテル・旅館領域での支援実績は、ホテル・旅館の支援実績のページで、成約(カプセルホテル1件・無人ホテル2件・地方旅館1件)、M&A戦略構築(静岡県等の旅館4件)、経営コンサルティング(3件。現在は新規募集を停止しております)に分けてご紹介しています。なお、当社は不動産の売買仲介は行っておりません。
本記事で参照した公的資料(2026年9月29日確認)
- 京都市「令和8年3月1日からの宿泊税の見直しが正式決定」(2025年10月3日更新)
- 京都市「宿泊施設に係る不動産取引における留意事項について」(2020年4月1日更新)
- 京都市「旅館業(簡易宿所営業)施設における条例適用状況に関する照会制度について」(2022年7月1日更新)
- 京都市「京町家を未来へ」解体工事業者の方へ
- 京都市「新景観政策」(2026年9月11日更新)
- 厚生労働省「旅館業法改正」(2023年12月13日施行分)
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