旅館売却の方法や相場、流れとメリット・注意点を解説

近年、後継者不在やインバウンド需要の回復を背景に、旅館の売却・M&Aが活発化しています。
ただし、旅館売却には通常の不動産売買とは異なるスキーム・税務・許認可の論点があり、進め方を誤ると思わぬ損失や手続き遅延を招きかねません。
本記事では、旅館業界の現状から売却方法、相場、メリット、流れ、高値で売るポイント、注意点、最新事例、相談先まで、判断に必要な情報を網羅的に解説します。
経営者の出口戦略としても注目される旅館売却の全体像を、丁寧に整理してお伝えします。
旅館の売却を検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
旅館業界の現状と売却が増えている背景

旅館の売却件数は近年増加傾向にあり、その背景には業界特有の経営環境変化があります。
ここでは、インバウンド回復・後継者不在・コロナ禍の影響という3つの観点から、現状を整理して解説します。
売却を検討する際、業界全体の流れを理解しておくことが意思決定の前提となります。
インバウンド回復で高まる旅館の市場価値
コロナ禍を経て、インバウンド需要が急回復したことで、日本の旅館の市場価値は再び高まっています。
2025年の訪日外国人旅行者数は過去最多の4,200万人超を記録し、宿泊単価も上昇傾向が続いています。
特に、「日本らしさ」を求める外国人観光客にとって、温泉・和室・伝統建築を備えた旅館は唯一無二の魅力的な選択肢です。
これにより、買い手企業や投資ファンドからの注目が集まり、売却価格が以前より高値で成立するケースも増えています。
市場の追い風を活かし、有利な条件で売却を実現するチャンスが広がっている時期といえるでしょう。
後継者不在による事業承継ニーズの増加
旅館・ホテル業界の後継者不在率は約60%に達するとされ、業界全体で深刻な事業承継課題となっています。
経営者の高齢化に加え、旅館業特有の長時間労働や休暇の取りにくさから、家族・親族への承継が困難になるケースが多く見られます。
後継者がいない状態が続けば、業績が好調でも廃業に追い込まれ、地域の雇用と歴史ある旅館が失われる事態となります。
そこで、M&Aによる第三者承継を選び、旅館を存続させる動きが加速しているのです。
親族外承継への抵抗感も薄れ、M&Aは旅館経営者にとって有力な出口戦略として認知されつつあります。
コロナ禍以降の経営環境の変化
コロナ禍は旅館業界に深刻な打撃を与え、経営環境の構造変化をもたらしました。
緊急事態宣言や外出自粛で稼働率が大幅に低下し、多くの中小旅館が経営難に陥りました。
また、コロナ収束後も人手不足・燃料費高騰・最低賃金の引き上げなど、コスト圧力が継続的に経営を圧迫しています。
こうした環境下で、独力での経営継続が難しいと判断する旅館経営者が増加し、大手企業や投資ファンドへの売却を選ぶ動きが活発化しています。
経営の安定化と事業継続のための現実的な選択肢として、M&Aへの関心は今後も高まり続けると見込まれます。
旅館を売却する主な方法

旅館の売却には、M&Aと不動産売却の2つの大きな選択肢があり、さらにM&Aは株式譲渡と事業譲渡に分けられます。
ここでは、それぞれの特徴と適したケースを整理します。
M&Aによる株式譲渡
株式譲渡は、旅館を運営する会社の株式を買い手に譲渡し、会社ごと売却する手法です。
手続きが比較的シンプルで、許認可や従業員の雇用、取引先との契約をそのまま承継できる点が大きなメリットです。
売り手の個人株主は譲渡所得が分離課税(税率約20%)となり、税負担を抑えやすい構造です。
一方、買い手は会社の資産・負債を丸ごと引き継ぐため、簿外債務リスクが伴います。
中小規模の旅館で、運営法人ごと譲渡したい場合に適した手法といえます。
M&Aによる事業譲渡
事業譲渡は、旅館事業の一部または全部を切り出して譲渡する手法です。
特定の事業や物件のみを譲渡したい場合や、不要な負債を切り離して売却したい場合に有効です。
買い手は必要な事業のみ取得できるため、簿外債務リスクを回避しやすいメリットがあります。
ただし、許認可・契約・雇用は個別に承継手続きが必要となり、株式譲渡より手続きが複雑です。
売り手側は法人税が課されるため、税務シミュレーションを事前に行うことが不可欠です。
不動産(居抜き物件)としての売却
不動産売却は、旅館の事業ではなく建物・土地を物件として売却する手法です。
事業継続を前提とせず、買い手は物件を別用途に転用したり、別ブランドの旅館として再出発させたりできます。
居抜き物件として家具・設備をそのまま引き継げる場合もあり、買い手にとって取得後の運営コストを抑えられる点が魅力です。
売り手にとっては手続きがシンプルですが、従業員の雇用継続が難しく、許認可も買い手で取り直す必要がある点に留意が必要です。
事業承継ではなく早期の現金化を優先する場合に選ばれるケースが多い手法です。
関連ページ:民泊・ホテル・旅館向けM&A仲介サービス|Tabiji Partners
旅館の売却価格の相場

旅館の売却価格は、財務指標と物件の特性から算定されます。
ここでは、一般的な算定式、価格を左右する要素、類似案件から相場感を掴む方法を解説します。
事前に相場を把握しておくことで、買い叩きや交渉決裂を回避できます。
一般的な算定式は時価純資産+営業利益×2〜5年分
中小企業のM&Aでは、「時価純資産+のれん代(年間営業利益×2〜5年分)」が企業価値の算定基準として広く用いられます。
例えば、時価純資産5,000万円、年間営業利益2,000万円(3年分平均)の旅館の場合、5,000万円+2,000万円×3年=1億1,000万円が相場の目安となります。
営業利益に乗じる年数は、業界の成長性、買い手企業の戦略、ブランド力などによって調整されます。
収益力が高くブランド力のある旅館ほど、より長い年数(5年以上)が乗じられ、高額な売却につながります。
また、DCF法(将来キャッシュフローの現在価値)や類似企業比較法といった他の手法を併用することで、より精緻な評価が可能です。
あくまで基準値であり、最終価格は売り手と買い手の交渉によって決まる点を理解しておきましょう。
売却価格を左右する立地・ブランド力・強み
旅館の売却価格は、財務指標だけでなく、立地・ブランド力・独自の強みといった定性的な要素にも大きく左右されます。
立地では、駅近・観光地・温泉地・空港アクセスの良さなどがプラス評価につながります。
ブランド力では、長年築いてきた知名度、口コミ評価、メディア露出、表彰歴などが価格を押し上げます。
また、外国語対応スタッフ・地元ブランド食材の使用・独自の体験プログラムなど、競合にはない強みも評価対象です。
希少性の高い文化財登録建築や、伝統工芸を活かした内装なども買い手の関心を集める要素となります。
一方、多額の負債、設備老朽化、悪い口コミなどはマイナス要素となり、価格交渉で不利に働くため注意が必要となります。
類似案件から相場感を掴む方法
より精度の高い相場感を得るには、自社と条件が近い旅館の売却事例を参考にするのが効果的です。
立地、規模、コンセプト、客室数、年間売上などが類似する案件の売却価格を調べることで、より現実的な相場を把握できます。
情報源としては、M&A仲介会社や事業承継プラットフォームが公表する成約案件、上場企業のプレスリリースなどが有用です。
M&Aサクシードやレコフのデータベースなど、業界専門サイトを活用すれば、過去の成約価格や売出中の類似案件を効率よく検索できます。
宿泊業特化のM&A仲介会社に相談すれば、業界専門家から最新の成約相場や買い手の動向を直接ヒアリングすることも可能です。
事前リサーチを丁寧に行うことで、希望価格の妥当性を判断する材料となるでしょう。
旅館を売却する4つのメリット

旅館売却には、経営者・従業員・取引先の三方にメリットをもたらす要素が複数あります。
ここでは、特に重要な4つのメリットを整理して解説します。
売却を前向きに検討する判断材料として、ぜひ押さえておきましょう。
後継者不在の解消と廃業回避
旅館売却の最大のメリットは、後継者不在の解消と廃業回避です。
業界全体の後継者不在率は約60%に達しており、親族・社内承継が難しい旅館が多数存在しています。
M&Aによる第三者承継であれば、業績好調でも廃業せざるを得ないといった事態を回避できます。
歴史ある旅館を次世代に引き継ぎ、地域に根ざした文化的な存在として残せる点でも、社会的意義の大きい選択肢です。
創業家の理念やブランドを尊重してくれる買い手を選べば、伝統継承と経営効率化の両立も可能となります。
従業員の雇用継続
廃業を選択すると、長年旅館に貢献してきた従業員を解雇せざるを得ず、安定した収入源を奪うことになります。
一方、M&Aによる売却であれば、買い手企業の下で雇用が継続され、従業員の生活を守れます。
事業規模の大きい買い手企業に売却することで、雇用条件や労働環境がむしろ改善されるケースも少なくありません。
新しい教育研修制度やキャリアパスが導入されることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。
経営者として最後まで責任を果たせる、実務面・倫理面の両方で価値ある選択といえます。
売却益でまとまった資金を得られる
旅館売却では、時価純資産+営業利益数年分の売却益を一度に獲得できます。
個人株主が株式譲渡で得た譲渡所得は分離課税(税率約20%)となり、税負担を抑えやすいのも特徴です。
獲得した資金は、老後の生活費、新規事業の立ち上げ資金、相続対策などさまざまな用途に活用可能です。
また、後継者問題で廃業した場合に発生する原状回復費用や退職金支払いを回避できる点も、実質的な収入増につながります。
経営者にとって、長年の経営活動の成果をまとまった現金として回収できる出口戦略として極めて有効です。
大手の傘下で集客力と経営安定化を実現
大手旅館・ホテルチェーンや投資ファンドの傘下に入ることで、集客力向上と経営安定化を実現できます。
大手企業が持つ全国的な知名度、豊富な資金力、サービス品質、運営ノウハウを活用できるため、自前では困難な事業成長が可能となります。
また、財務基盤が強化されることで、コロナ禍のような外部ショックにも耐えられる体制が整います。
インバウンド対応のシステム導入や設備投資も、買い手のリソースを活用することで実現しやすくなります。
売却後も経営アドバイザーとして関与し、自身のノウハウを活かしながら旅館の発展を見届ける選択肢もあります。
旅館を売却するまでの流れ

旅館の売却は、相談から最終契約・クロージングまで5つのフェーズを順を追って進めます。
ここでは、各ステップで必要となる手続きや留意点を整理して解説します。
M&A仲介会社など専門家に相談する
旅館売却の第一歩は、M&A仲介会社や事業承継アドバイザーへの相談です。
初回相談では、譲渡の目的・希望条件・財務状況などをヒアリングし、概算の企業価値評価が行われます。
宿泊業に精通した専門家を選ぶことで、業界特有の論点を踏まえた最適な戦略を設計できます。
相談段階では費用が発生しないケースが多いため、複数社に話を聞いて比較するとよいでしょう。
アドバイザーとの相性は数か月にわたるプロセスで重要となるため、誠実さと専門性の両方を見極めましょう。
信頼できるパートナー選びが、売却成功の最大のカギとなります。
譲渡先の選定と秘密保持契約の締結
アドバイザリー契約締結後は、買い手候補の選定とアプローチが始まります。
ノンネームシート(匿名概要書)を用いて、売却情報が外部に漏れないよう慎重に候補先を絞り込みます。
関心を示した買い手候補とは、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、より詳細な情報開示を進めます。
情報漏洩を防ぐため、社内外への売却情報の取り扱いには細心の注意が必要です。
買い手候補からの質問に丁寧に対応し、自旅館の魅力を伝えることが、有利な条件交渉につながります。
信頼できる買い手と確実につながるための重要なフェーズとなります。
基本合意書の締結
条件面で大筋の合意に至った場合、基本合意書(LOI/MOU)を締結します。
基本合意書には、譲渡価格の目安、スケジュール、独占交渉権、デューデリジェンスへの協力義務などが盛り込まれます。
通常は買い手側に独占交渉権が付与され、他の候補先との交渉はストップします。
法的拘束力は限定的ですが、最終契約に向けた重要な節目となるため、内容を慎重に確認しましょう。
基本合意書の段階で価格やスケジュールに齟齬があると、後の交渉が難航するため、専門家のレビューが不可欠です。
弁護士やアドバイザーのレビューを受けることが推奨されます。
デューデリジェンスの実施
基本合意後は、買い手側によるデューデリジェンス(DD・買収監査)が実施されます。
財務・法務・税務・労務・不動産・環境など多角的な調査を通じて、対象会社の実態とリスクが精査されます。
売り手側は要求される資料を迅速かつ正確に提供し、誠実な情報開示を行うことが信頼関係構築につながります。
DDの結果、簿外債務や訴訟リスクが判明すれば、譲渡価格の調整や条件変更が行われます。
売り手側も自社のDDをあらかじめ実施(セルサイドDD)することで、リスクを事前に把握・解消することが可能です。
通常1〜2か月程度の期間を要するため、計画的なスケジュール管理が重要です。
最終契約書の締結とクロージング
DD完了後は、最終契約書(株式譲渡契約書・SPA等)を締結します。
最終契約書には、譲渡価格、表明保証、補償条項、競業避止義務などの詳細な条件が盛り込まれます。
契約締結と同時に譲渡代金の支払いと株式・事業の引き渡し(クロージング)が行われ、M&Aが完了します。
クロージング後も、従業員・取引先への通知、許認可の名義変更、登記手続きなど実務作業が残ります。
また、買い手とのPMI(統合プロセス)を円滑に進めることで、譲渡後の事業価値最大化も実現できます。
専門家と連携しながら漏れなく進行管理することが、円滑な引き継ぎに直結します。
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旅館を高値で売却するためのポイント

旅館を少しでも高値で売却するには、戦略的な準備と適切なタイミングが不可欠です。
ここでは、4つの実践的ポイントを解説します。
売却プロセスに入る前から準備を始めることで、最終価格が大きく変わってきます。
強みやアピールポイントを整理する
高値売却の第一歩は、自旅館の強みとアピールポイントを言語化・可視化することです。
立地、ブランド力、料理、サービス、温泉の質、独自の体験プログラム、外国人対応など、買い手にとって魅力となる要素を整理しましょう。
メディア掲載歴、受賞歴、口コミ評価、SNSのフォロワー数なども、客観的な価値の裏付けとして有効です。
情報開示資料(IM)に強みを明確に盛り込むことで、買い手の興味を引き、譲渡価格交渉を有利に進められます。
客観的データと定性的ストーリーを両輪で伝えることが、価値ある旅館との印象を残すコツです。
財務状況を可視化し決算書類を整える
透明性の高い財務情報は、買い手の信頼を獲得し高値売却を実現する基盤となります。
過去3〜5期分の決算書、税務申告書、月次試算表、固定資産台帳などを整理し、いつでも提出できる状態にしておきましょう。
簿外債務や個人経費の混在などがあれば、事前に整理・解消しておくことで、DDでの指摘を最小化できます。
会計士・税理士のサポートを受けて財務状況を整えておくことが、譲渡価格を維持する重要なステップです。
また、月次推移や客室稼働率データなど、買い手が事業性を判断しやすい資料を併せて準備しておくと評価が高まります。
リピーターや安定顧客基盤の価値を伝える
旅館の収益源として、リピーター・常連客・固定顧客基盤は買い手にとって極めて価値の高い資産です。
リピート率、常連客の比率、年間予約数、平均客単価、誕生日記念予約や法人定期利用などのデータを整理しておきましょう。
OTA(楽天トラベル、じゃらん等)での累計予約数や評価も、安定した集客力の証明として効果的です。
数字に裏付けられた顧客基盤を示すことで、買い手は将来の収益見通しを立てやすくなり、高い譲渡価格を提示しやすくなります。
顧客との関係性は譲渡後の事業価値継承にも直結するため、引き継ぎプランの提示も重要となります。
売却タイミングを見極める
売却タイミングは、最終的な譲渡価格を大きく左右する重要な要素です。
業績が好調で直近の決算が黒字のタイミング、インバウンド需要が高い局面、業界全体でM&Aが活発な時期などが理想的です。
逆に、業績が下降トレンドに入ってから売却を検討すると、価格交渉で不利になりやすいため注意が必要です。
経営者の高齢化や体調変化、相続対策の必要性なども売却タイミング判断の材料となります。
特に、業績が好調なうちに売却を進めることで、買い手間の競争を生み出し、より高値での成約が期待できます。
市場動向と自身の状況を総合的に考慮し、最適なタイミングを逃さないことが高値売却の決め手となります。
旅館売却における注意点

旅館売却を成功させるには、事前に把握しておくべき注意点があります。
ここでは、情報漏洩・税金・許認可承継の3つの観点から、特に重要なポイントを解説します。
情報漏洩による従業員・取引先への影響
M&A検討中に売却情報が外部に漏れると、従業員の動揺・離職、取引先との関係悪化、競合の優位性確保など、深刻な悪影響が及びます。
従業員が将来の雇用に不安を感じて辞めてしまえば、買い手企業から見た事業価値が下がり、譲渡価格の引き下げにつながりかねません。
対策として、秘密保持契約(NDA)の徹底、関係者の情報共有範囲の最小化、適切なタイミングでの社内発表が不可欠です。
M&A仲介会社と連携し、情報管理を徹底しながらプロセスを進めることが、円滑な売却実現の前提となります。
「ノンネーム」での買い手探索など、慎重な情報開示プロセスが求められます。
また、社内発表のタイミングは基本合意やクロージング直前が一般的で、慎重な判断が必要です。
売却にかかる税金の確認
旅館売却では、選択するスキームによって税金の種類と金額が大きく変わるため、事前確認が不可欠です。
株式譲渡(個人株主)の場合、譲渡所得は申告分離課税で約20%(所得税15.315%+住民税5%)となります。
事業譲渡の場合、売り手の法人に譲渡益に対する法人税(実効税率約30%)が課され、その後オーナーへの分配にも所得税が発生する二重課税となります。
また、不動産の譲渡には登録免許税や不動産取得税がかかる場合もあり、設備の取り扱いによっては消費税も発生します。
事業承継税制など、税負担を軽減できる特例制度の活用検討も重要なポイントです。
税理士やM&A専門家と連携し、税負担を最小化できるスキーム設計を行うことが手取り額確保の鍵となります。
旅館業許可の承継と手続き
旅館を運営するには旅館業法に基づく許可が必要であり、売却スキームによって承継手続きが異なります。
株式譲渡の場合、運営法人がそのまま継続するため、原則として許可は引き継がれます(変更届出のみ)。
一方、事業譲渡や不動産売却の場合、買い手側で改めて旅館業許可を取得する必要があります。
許可取得には保健所や消防署への申請、施設基準の適合確認などが必要で、数か月の期間を要するため注意が必要です。
建物の構造変更や設備改修が必要となるケースもあり、買い手の準備期間を考慮したスケジュール設計が欠かせません。
クロージングのタイミング設計には、許認可手続きのスケジュールを織り込むことが必須です。
関連ページ:不動産法人→IT法人への事業譲渡|M&A事例
旅館売却・M&Aの事例

実際の旅館売却事例を知ることで、M&Aの目的・スキーム・効果を具体的にイメージできます。
ここでは、業界で注目を集めた3件の代表的な事例を紹介します。
ニトリによる料亭旅館「銀鱗荘」の事業承継
ニトリホールディングスは、北海道小樽市の料亭旅館「銀鱗荘」を事業承継により取得しました。
銀鱗荘は昭和14年創業、北海道の文化財百選にも選ばれた由緒ある旅館で、事業承継課題を抱えていました。
買い手のニトリは、小樽エリアの振興に貢献する目的で、異業種である旅館を承継。
「超一流のサービスを提供し、道内外および海外から観光客を招き入れる」と発表し、ニトリ子会社のニトリパブリックが運営を担当しています。
創業家の伝統と価値観を尊重しながら、大手企業の経営リソースで再生するモデルケースとなった事例です。
異業種大手による地域貢献型のM&A事例として、業界で高く評価されている取引です。
ベインキャピタルによる大江戸温泉物語の買収
国際的なプライベートエクイティファンドのベインキャピタルは、2015年に大江戸温泉物語の全株式を約500億円で取得しました。
大江戸温泉物語は、全国に23の温泉旅館と6つの温浴施設・テーマパークを展開する大手温泉旅館チェーンです。
ベインキャピタルは、訪日外国人観光客の増加で成長が見込める温泉旅館市場を狙い、買収を実行。
買収後は、外国人向け販促ノウハウの活用や新規出店の加速を通じ、企業価値向上に取り組んでいます。
大規模温泉旅館チェーンへの投資ファンド参入は、業界の構造変化を象徴する出来事として記憶されています。
投資ファンドによる旅館事業拡大の代表例として、業界の注目を集めた大型M&Aです。
小野写真館と「桐のかほり咲楽」のシナジー型M&A
茨城県で写真館・結婚式場を運営する小野写真館は、伊豆の温泉旅館「桐のかほり 咲楽」を事業譲渡で取得しました。
売り手の咲楽は、経営者高齢化と業態特性から親族承継が難しく、事業承継先を探していた状況でした。
買い手の小野写真館は、コロナ禍でブライダル事業の売上が約40%減少する中、業態転換を目的にM&Aを実施。
M&A後は、旅館併設のウエディングフォトスタジオや一棟貸し切り挙式など、両社の強みを活かした新事業を展開し、シナジー効果を創出しています。
売り手・買い手双方の課題を解決し、新たな事業価値を生み出した好例といえる取引です。
異業種シナジー型M&Aの好事例として、業界で広く参考にされる取引です。
関連ページ:民泊・ホテル・旅館向けPMI支援サービス|Tabiji Partners
旅館売却の相談先と専門家の選び方

旅館売却を成功させるには、自社のニーズに合った相談先選びが極めて重要です。
ここでは、主要な相談先の特徴と、宿泊業特化の仲介会社を選ぶ重要性について解説します。
M&A仲介会社に相談するメリット
M&A仲介会社は、売却に関する戦略立案から相手探し、交渉、契約までを一気通貫で支援してくれる総合的なパートナーです。
豊富な買い手企業ネットワークを保有しており、自社では出会えない最適な譲受先にアプローチできるのが最大の強みです。
また、企業価値評価、ノンネーム情報の作成、デューデリジェンス対応、契約書レビューなど、専門性の高い業務をワンストップで担ってくれます。
成功報酬型の料金体系が一般的で、成約しなければ費用が発生しないため、リスクを抑えてプロセスをスタートできる点も魅力です。
経験豊富なアドバイザーは交渉の代理人としても機能し、感情的にこじれやすい局面でも冷静な判断をサポートしてくれます。
売却を本格的に検討するなら、まずM&A仲介会社への相談が最優先となります。
金融機関や事業承継・引継ぎ支援センターの活用
M&A仲介会社以外にも、地方銀行・信用金庫の事業承継支援部門や、国の事業承継・引継ぎ支援センターといった相談先があります。
金融機関は、長年の取引関係を背景にした信頼ベースのアドバイスや、グループ内での買い手紹介などを提供します。
事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省が全国に設置している公的機関で、無料相談や買い手とのマッチング支援を受けられます。
初期段階の情報収集や検討フェーズで活用すれば、第三者視点からの客観的な助言を得られる点が大きなメリットです。
ただし、専門性や買い手ネットワークの規模では民間の仲介会社に劣る場合もあるため、用途に応じた使い分けが効果的です。
民間のM&A仲介会社と組み合わせて活用することで、選択肢を広げられます。
宿泊業に精通した仲介会社を選ぶ重要性
旅館売却を成功させる最大の鍵は、宿泊業に精通した専門特化の仲介会社を選ぶことです。
一般的なM&A仲介会社では、旅館業特有の許認可・収益構造・業界商習慣への理解が浅く、最適なスキーム設計や買い手選定が難しい場合があります。
宿泊業特化の仲介会社であれば、業界に根ざした買い手ネットワーク、相場感、業界トレンドの知見を駆使し、有利な条件での売却を実現しやすくなります。
また、民泊・ホテル・旅館を含む宿泊業全体に強い専門家であれば、業態を超えた多様な買い手との接点を活用でき、最適な譲渡先を見つけられます。
Tabiji Partnersのような宿泊業特化のM&A仲介サービスを活用することで、業界知見を最大限に活かした売却が実現可能です。
まとめ
旅館売却は、後継者不在の解消・従業員の雇用維持・売却益の獲得・経営安定化といった多くのメリットがある一方、税務・許認可・情報管理などの注意点も存在します。
成功の鍵は、自社の強みの可視化、財務状況の整理、適切な売却タイミング、そして信頼できる専門家の選定です。
業界に精通した宿泊業特化のM&A仲介会社を活用すれば、相場感のある適正な譲渡が実現しやすくなります。
旅館・ホテル・民泊の譲渡や買収をご検討の方は、宿泊業特化のM&A仲介サービスへお気軽にご相談ください。
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